デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

手に余る、でも欲しい。ブレードランナー/デッカードグラス

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何か考えているようで考えてない、アンニュイな表情のパターンをいくつか作って、それを順列組み合わせにして無駄のない「演技」をしている役者といえば・・・。

そう、ハリソン・フォードです。

今回改めて見直してよく分かりましたが、この人、既にこの作品から“エコノミー演技”全開だったんですねぇ…。

ブレードランナー[ファイナル・カット/Blu-ray版]」(1982年/リドリー・スコット監督)

本作でハリソン・フォード演じるデッカードはひたすら酒を飲んでおります。

冒頭の(謎の)うどんを除けば口にするのはほとんど酒・酒・酒。

前半、自宅でウィスキー(オリジナルボトル仕様のジョニーウォーカー黒ラベルのようです)を飲む場面は、その雰囲気が実にハードボイルドで「ブレードランナー」という映画のカラーを決定付けた名シーンです。

この映像をより印象深くしているのが、デッカードの持っているウィスキー・グラス

下部がくびれているスクエア・グラスなのですが、やたらデカイ。そしてかっちょいい。

日本人の手には収まりきらないのではないかと思えるほどですが、デッカードの手にはよく馴染んでおりました(以前はアメリカ経由でイタリア製プロップレプリカが入手できたようですが、今でも手に入るのでしょうか)。

中盤、逃走中のレプリカント、レオンにボコボコにされたデッカードがチャイナタウンの怪しげな店で「チンタオ」を購入します。

ご存知のようにチンタオ(青島)はビールですが、デッカードが買ったのは無色透明の液体の入った大きめのボトル。

どうも小道具係が青島というものを知らなくて、何か別の白酒(パイチュー)を用意してしまったそうです。

でもこの間違いが大正解であったことが次のシーンで分かります。

ショットグラスに注いで口に運ぶと、デッカードの口からグラスに鮮血が流れ込むという息を呑むような美しいカットがあるのです。

ビールだと泡泡でこうはいかないでしょう。

余談ですが、レプリカントを作ったタイレル博士は、「シャイニング」でジャック・ニコルソンにジャック・ダニエルを注いだ幽霊バーテンダーです。

スピナーが宙を飛び、レプリカントが跋扈する未来であっても、人の拠り所は結局お酒。

実はブレードランナーの隠しテーマは「No Liquor, No Life」なのかもしれません(え、違う?)。