デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

運命に抗う4日と6時間(嗚呼トニー…)。 デジャヴ

イメージ 1
『人はいつでも過去を観ている。鏡に映る自分を見るのだって光が鏡に反射して目に届くまでに時差があるからな』

片目(肉眼)で現在の映像を、片目(モニター)で同じ場所の4日と6時間前の映像を捕捉しながら、4日と6時間前に逃走している犯人を追撃する。

何と言う映画的な映像でしょう。

タイム・パラドックス的には色々と穴のある設定だとは思いますが、この絵柄だけで後はチャラです。

「デジャヴ」(2006年/トニー・スコット監督)

一瞬で543人の命を奪ったフェリー爆破テロ。

犠牲者に偽装した美しき他殺体クレア(ポーラ・パットン)。

テロ事件の糸口となるこの死体に不思議な情感を揺さぶれるATF捜査官ダグ(デンゼル・ワシントン)。

一般的なサスペンス・アクションかと思いきや、FBI捜査官ポール(ヴァル・キルマー)が白雪姫なる新システムを見せられる所から話はあらぬ方角に面舵一杯。

白雪姫は、全国に張り巡らされた監視カメラのデータを3D映像に再構成し、現時刻からきっちり4日と6時間前の状況を映し出す最新システム(データの映像編集に4日と6時間掛かる、という理屈)。

場所の設定は自由。温度感知器の併用により壁の向こう側も透視可能。

ただし、視聴のチャンスは1回きり。録画は出来ても時間を遡って別のアングルで再確認する事はできません。

と、ここまでなら、「おお、流石アメリFBI。国民のプライバシーなんぞ屁とも思ってねーなー」と感心して終りなのですが、事はそんな簡単な話ではなく…。

実はこの映像、過去データの立体化、などではなく、4日と6時間前の“実況生中継”なのでした。

全く別のシステムを構築中に偶然発生した「現在と“4日と6時間前”を繋ぐワーム・ホール」。

1枚の紙に記されたA点とB点の距離を紙を折り曲げてゼロにする。紙を物理的な距離と看做せば“ワープ”の原理と一緒ですが、白雪姫はこれを時間と看做したシステム。

『繋がっているのなら、何かサインは送れないのか? 4日と6時間前の俺にメモを送れれば、テロを未然に防ぐ事ができるだろう』(この時点でSF)

果たして歴史を変えることはできるのか?

伏線の張り方が実にお上手。

ダグの相棒が爆破フェリーに乗っていたのは何故か? 死体として対面するまで面識のなかったクレアがダグ宛に電話をしてきたのは何故か? 手袋をしていたはずなのに、クレアの部屋からダグの指紋が大量に出てきたのは何故か? 犯人の家に救急車が突っ込んで大破していたのは何故か?

後半は「タイム・コップ」「グランドツアー」の趣き。

アラはありますが、有無を言わさず作りきったスタッフに潔さを感じます。

チカチカしない(スタイリッシュじゃない)トニー・スコットは魅力的ですね。

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追伸:トニー・スコット監督がお亡くなりになりました。8月19日午後12時30分頃。ロスのビンセント・トーマス・ブリッジの駐車場から飛び降りて。自殺。68歳。
何やってんだよ…。「サブウェイ123」はちょっと外しちゃったけど、今日レビューした「デジャヴ」とか「アンストッパブル」とか、いい感じだったじゃんか。「トップガン」の続編はどうするんだよ。誰か4日と6時間の時差利用して助けに行ってやってくれ…。