デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

科学賛歌のネガフィルム。 ウルトラマン/故郷は地球

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『諸君、あれは怪獣ではありません。あれは、いや彼は、我々と同じ人間なのです』

加熱する宇宙開発競争。先走った有人実験の失敗。隠蔽。見捨てられたロケットとパイロット。

人間の形を捨て、見捨てられた怨嗟を糧に故郷に辿りついた男、ジャミラ

『諸君、改めて科学特捜隊パリ本部からの命令を伝える。ジャミラの正体を明かす事無く、秘密裏に葬り去れ。宇宙から来た1匹の怪獣として葬り去れ』

北米版ウルトラマンTHE COMPLETE SERIESからの個別エピ・レビュー。

やはり最初はこの1本。

「第23話・故郷は地球[英題:My Home Is Earth]」(1966年12月18日放送/実相寺昭雄監督・佐々木守脚本)

後番組の「セブン」では“必ずしも科学が人類に発展と平和をもたらしてくれる訳ではない”というアンチ・テーゼを掲げていましたが、「ウルトラマン」は科学の限りない可能性に夢と希望を見出していました(“空想特撮シリーズ”というサブタイトルがそれを物語っています)。

その中にあって、唯一と言っていい「科学が生んだ悲劇」を綴ったのが本作です。

そして本作の主役はイデ(二瓶正也)。

『俺やめた…ジャミラと闘うのやめた』

『よく考えてみりゃ、ジャミラは俺達の先輩じゃないか。その人と闘えるか?!』

『俺達だって、俺達だってなぁ、いつジャミラと同じ運命になるか知れないんだぞ!』

『くっそー、俺がこんなもの(透明なジャミラの円盤を可視化する光線)を考え出さなけりゃ良かったんだ。そうすりゃ、ジャミラは…』

ジャミラてめえ! 人間らしい心はもうなくなっちまったのかよお!』

国際平和会議の会場を襲撃したジャミラウルトラマンの水流攻撃を受け、号泣(にしか聞こえない)、七転八倒して悶死。

その伸ばした手の先には星条旗が…。

自分達のした事を棚に上げて、勇敢な宇宙飛行士ジャミラを称える記念碑を造る人間。

『偽善者はいつだってこうだ。言葉だけは美しいけれど…』

この最後のイデのつぶやきが“偽善者”なのか“犠牲者”なのか“為政者”なのか迷う所なのですが、偽善者と言っているように聞こえます。因みに英語字幕は、

「Politicians Are Always Like This. Only Their Words Are Beautiful」

となっていました。

Politicians:政治屋、なので意味合いとしては“為政者”なのかもしれませんが、話の流れとしては“偽善者”(政治屋と同義語)が相応しいような気がします。