不器用さが災いして辺境の地をたらい回しにされている保安官。
その生活に疲れきって息子を連れて去った妻。
それでも正義を貫きたい。
ご存知ハイアムズ版「真昼の決闘」inジュピター。
(1981年/ピーター・ハイアムズ監督)
木星に一番近い衛星IO(イオ)にある鉱石採掘基地“Con-Am 27"。
屈指の採掘量を誇る優良基地ですが、ここ1年で精神に異常を来たす労働者が急増。
新たに赴任した保安官オニール(ショーン・コネリー)は、好業績の影に基地責任者シェパード(ピーター・ボイル)の覚醒剤による労働者管理を嗅ぎつけますが…。
突っ込み所は満載です。
影響を受けたなんてレベルじゃない「エイリアン」丸パクリな美術セット(監督自身「ロマンチックな装飾が一切無い美術はリドリー・スコットの世界観を土台にしている」と音声解説でシレっと告白)。
本国のデータベース参照以外、警察の組織力を全く活用しない主人公(折角押収した覚醒剤、廃棄しちゃ駄目だろ。シェパードの殺し屋依頼テープとかあるんだから応援頼めよ)。
唐突に現われる身内刺客(ええっと、どちらさんでしたっけ?)、などなど。
それでも本作に惹かれてしまうのは、ハイアムズの丁寧な画作りとカメラワーク、いまさらやり直しはできない老境の意地、などがツボだったからかもしれません。
例えマイナス170度、1/6重力の宇宙でも“西部劇なんだから武器は敵も味方もショットガン”という“科学って何?”な潔いこだわりもわたし的には好評価。
「真昼の決闘」の保安官の女々しさ(一般人に協力を依頼)に腹を立てたホークスが撮ったアンサー・ムービーが「リオ・ブラボー」。
その「リオ・ブラボー」を下敷きにした「要塞警察」をカーペンター自身が火星にかっ飛ばしたのが「ゴースト・オブ・マーズ」。
という事は「ゴースト・オブ・マーズ」と本作は遠い親戚という事でしょうか。
ハイアムズとカーペンター。職人監督(器用貧乏)と反骨マイスター(不器用)。
ちょっと地平は違いそうですが、「西部劇が好き」「ワイドスクリーンが大好き」という共通点も。
何か「ゴースト・オブ・マーズ」が観たくなってきたな…。