デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ゴースト・オブ・マーズの合わせ鏡。 アウトランド【Blu-ray版】

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「西部劇を撮りたかった。その話をする度に時代遅れだと笑われた」
ピーター・ハイアムズ


不器用さが災いして辺境の地をたらい回しにされている保安官。

その生活に疲れきって息子を連れて去った妻。

それでも正義を貫きたい。

「腐った機械の腐った部品になるのは嫌なんだ」


ご存知ハイアムズ版「真昼の決闘」inジュピター。

 


木星に一番近い衛星IO(イオ)にある鉱石採掘基地“Con-Am 27"。

屈指の採掘量を誇る優良基地ですが、ここ1年で精神に異常を来たす労働者が急増。

新たに赴任した保安官オニール(ショーン・コネリー)は、好業績の影に基地責任者シェパード(ピーター・ボイル)の覚醒剤による労働者管理を嗅ぎつけますが…。

突っ込み所は満載です。

影響を受けたなんてレベルじゃない「エイリアン」丸パクリな美術セット(監督自身「ロマンチックな装飾が一切無い美術はリドリー・スコットの世界観を土台にしている」と音声解説でシレっと告白)。

本国のデータベース参照以外、警察の組織力を全く活用しない主人公(折角押収した覚醒剤、廃棄しちゃ駄目だろ。シェパードの殺し屋依頼テープとかあるんだから応援頼めよ)。

唐突に現われる身内刺客(ええっと、どちらさんでしたっけ?)、などなど。

それでも本作に惹かれてしまうのは、ハイアムズの丁寧な画作りとカメラワーク、いまさらやり直しはできない老境の意地、などがツボだったからかもしれません。

例えマイナス170度、1/6重力の宇宙でも“西部劇なんだから武器は敵も味方もショットガン”という“科学って何?”な潔いこだわりもわたし的には好評価。

「真昼の決闘」の保安官の女々しさ(一般人に協力を依頼)に腹を立てたホークスが撮ったアンサー・ムービーが「リオ・ブラボー」。

その「リオ・ブラボー」を下敷きにした「要塞警察」をカーペンター自身が火星にかっ飛ばしたのが「ゴースト・オブ・マーズ」。

という事は「ゴースト・オブ・マーズ」と本作は遠い親戚という事でしょうか。

ハイアムズとカーペンター。職人監督(器用貧乏)と反骨マイスター(不器用)。

ちょっと地平は違いそうですが、「西部劇が好き」「ワイドスクリーンが大好き」という共通点も。

何か「ゴースト・オブ・マーズ」が観たくなってきたな…。