本作を観る前に用意するもの、それは“ゾンビ好きに悪人はいない（はずだ）”という地球規模の性善説に裏打ちされた“許容心”。
用意した？ まだ？ 出来た？ じゃ行きましょう。
「ゾンビ自衛隊」（2005年／友松直之監督）
今日も富士の樹海は大賑わい。
髪にカーラーを巻きつけたまま首を吊っているおばさん。その死体を片付けている自衛隊（僅か５名の小パーティ）。
グラビアアイドルと撮影スタッフ。仲間を始末しに来たやくざ。
そして、不倫相手と揉めている脱サラ・ペンションオーナー。
そこへＵＦＯが墜落。謎の光を放つと樹海中の死体がゾンビとなって蘇えったから、さあ大変！（わあ、びっくり）。
生き残った人間が合流してペンションに篭城するも陥落は時間の問題。
その時、女性自衛官・友里（渡瀬美遊）が覚醒。彼女こそ軍が極秘裏に開発したサイボーグ、局地戦闘用サイバー自衛官だったのだ！（もう、びっくり仰天）。
ユニバーサル・ソルジャー＋ミカドロイドな兵器と化した友里はゾンビを制圧、樹海の主たる英霊ゾンビとの最終決戦へ！
日本刀片手に決めたポーズは、正にリボルケイン引き抜いた仮面ライダーブラックＲＸ！ よ、日本一！
と書くと、すげー面白そうに聞こえるかもしれませんが（え、聞こえなかった？）、実態は笑うに笑えない脱力ギャグと、今時そんな安いＣＧ探すほうが大変だわ！なウルトラチープ画像が織り成すＺ級ホラー・コメディです。
本来なら、いくらゾンビ愛が溢れていようが「おっさん、大概にせいよ」と説教のひとつもかます所ですが、オープニングの口上が実に素晴らしいので、本編の出来は不問にします。
こんなものを買っては勿論、借りて観るモノ好きもいないと思うので、ネタバレ上等で全文を転記します。
“総理大臣の靖国神社公式参拝は当然でしょう。ってかやらなきゃ駄目でしょ。
国の為に戦って死んだ英霊が祀ってあるんだ。日本国の首相が手を合わせなくてどうするんです。
アメリカ大統領がアーリントンに墓参りしたって誰も文句なんか言わないでしょう？
何ですって？ 先の大戦で日本はアジア諸国に迷惑をかけた？
そんな馬鹿な。
日本が戦って見せたから、アジア諸国は欧米植民地支配から独立する勇気が持てたんだよ。
日本には日本の正義があった。
だいたいアメリカのどこが正義の戦いですか？
日米戦でアメリカ軍は東京大阪各都市空爆で90万人、広島・長崎の原爆で30万人もの民間人を殺している。
非戦闘員を120万人ですよ。
とんでもない大虐殺だ。国際法無視もいいとこです。
黄色の猿はいくら殺しても構わないと思ったんでしようね。
イラクとの戦争だって無茶苦茶だ。
大量破壊兵器がテロリストの手に渡ると大変だから、フセイン政権をブッ潰そうって、そんなの独立国に対する戦争の理由になるわけがない。
どうしてそんな馬鹿げた戦争に自衛隊を派兵しなければいけないですか？
あんなのは国際貢献でもなんでもない。
アメリカへのおべんちゃら、ゴマすり戦争協力ですもんね。
いざという時アメリカに守ってもらいたいから、日本と何の関係も無い戦争に自衛隊を派兵しなくちゃいけない、あのね、いいですか、ボクは別に話をややこしくしたい訳じゃない。すごく単純なことなんですよ。
日本もちゃんと軍事力を持てばいいんです。
北朝鮮、中国も日本にミサイル向けてますよね？
それに対抗できる軍備を日本もちゃんとするんです。
日本の国は日本が守る。 ね？ 単純でしょ？
アメリカみたいな戦争屋の言いなりになっても、この先ちっともいい事なんてありませんからね。
ボクは別にアメリカの悪口を言いたいんじゃありませんよ。
アメリカの戦争は嫌いですけど、アメリカの文化に好きなものはたくさんある。
ハンバーガー。ロック。ハリウッド映画・・・とくに・・・、
ジョージ・Ａ・ロメロは天才だ”
シレっと言いたい事言っていますね。ゾンビ話とサイバー自衛官開発話に繋げるための強引な前フリですが、さて、本当に言いたかったのはどの部分でしょう。
