蟻に続く“とにかくでっかくしたれや”の題材は定番“蜘蛛”。
原寸大でも嫌々な毒蜘蛛が牛を丸呑みするくらい大きくなったら…。
(1955年/ジャック・アーノルド監督)
ここはアリゾナ。ディーマー博士は人口増加を憂いておりました。
「このままでは2000年には36億2500万人を突破してしまう。食料が足りない。家畜を巨大化させる成長促進ホルモンを作るのだ!」
モルモットが、ウサギが、そして何故かタランチュラが日を追って巨大化。おお、成功だ!
ここで弟子二人が博士に内緒で人体実験。
互いに薬を打ち合った二人は僅か4日で全身がサンダ&ガイラ&マタンゴ化した末期先端肥大症に。
1人はアリゾナの荒野で悶死、もう1人は狂気に駆られて研究室をサーチ&デストロイした後、ディーマー博士にも成長促進剤を注射して絶命。
全ての実験材料が焼失したかに見えましたが、ただ1匹、タランチュラだけが自由の身に。
やがて牧場で白骨化した牛が、ハイウェイでは投げ捨てられたかのように大破した車と人間の骨が…。
暴れるのはこの蜘蛛1匹だけですし、怪獣映画のように街を破壊するスペクタクルがあるわけでもありません。
しかし、そこは脚本の妙。
マタンゴ化した死体の謎という猟奇サスペンスな導入から、博士の研究内容、一夜にして白骨化した牛といった状況証拠の積み重ねでなかなかに飽きの来ない展開になっています。
見せ場となる特撮も、ただ蜘蛛を合成しただけなのに(モノクロ画面が幸いして)さして違和感がありません。
特に室内と窓の外の蜘蛛、そして崩れ落ちる天井を合成したカットや、屋外の実景と人物、屋敷の模型と蜘蛛を重ね合わせたシーンなどかなりの迫力。
本作は「半漁人の逆襲」(1954)に続く、クリント・イーストウッドの出演2作目に当たりますが、クレジットには名前無し。
どこに出ているのだろうと気にしていましたがまるで見つからず。
どこだ、イーストウッド!? まさか、オープニングに出てきた顔面マタンゴなあいつじゃないだろうな、なんて思っているうちに画面はクライマックス。
タランチュラ殲滅のために次々飛び立つ空軍機。
おいおい、終わっちまうぞ、と思ったらいました!
飛行部隊の隊長です。ヘルメット+マスクで眼しか見えないにも関わらず、ひと目でイーストウッドと分かります。なんというオーラ、なんという眼力。
後にファイヤーフォックスまで乗りこなすイーストウッドに蜘蛛ごときが叶うはずありません。
ナパーム・ボンバーでファイヤー・ダンス。ありがとう、イーストウッド!