デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

追悼:大滝秀治。 特捜最前線/バラの花殺人事件!

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『馬鹿なことをしたもんだな、ジョー。一生を棒に振る価値のあることだったのか?』

大滝秀治さんがお亡くなりになりました。

10月2日。肺扁平(へんぺい)上皮がん。87歳。

代表作がありすぎて手がつけられません。えいや!で1本選びます。

特捜最前線/第214話・バラの花殺人事件!」(1981年6月10日放送/天野利彦監督・長坂秀佳脚本)

大滝さんの役所はご存知船村刑事。

公園で発見されたヤクザの死体。その手は胸で組まれ、1輪のバラの花が添えられていました。

数日後にも同じ状況の死体が。現場を見た船村は、刑事を志す切っ掛けを与えてくれた1本の映画を思い出します。

タイトルは「薔薇の復讐」

足を洗い実業家になったヤクザが、昔の恋人の復讐のためにヤクザ5人を殺す話。現場には必ず1輪のバラの花。それは唯一の理解者である刑事へのメッセージ。

『ラストシーンが良かったねえ…』

ひょんな事から所轄の事件に関わることになった船村は、老人ホームで暮らす1人の男と出会います。彼こそ「薔薇の復讐」に主演した俳優・柳連三でした。

柳の部屋には映画の小道具だった帽子とバラの花。

『あの映画の主人公ジョーは私自身なんです。現実の私は何も出来ませんでしたが…。刑事さん、あの映画のラストシーンを覚えていますか?』

特命課の捜査で、殺されたのは老人に酷い仕打ちをした者ばかりである事が判明。船村は柳が映画同様「正義の殺人」を犯したのだと確信。しかし、柳は一足先に姿をくらませていました。

『ラストシーンは、ラストシーンはどこですか?』

映画のラストは死んだ恋人の墓の前で刑事を待つ、というものでした。特命メンバーは死んだホームの老人の墓へ。しかし、船村は・・。

柳が行ったのは、浅草の撮影所跡。

そっと小道具の帽子を被せてやる船村。

『馬鹿なことをしたもんだな、ジョー。一生を棒に振る価値のある事だったのか?』

『だけど旦那、俺がやらなかったら、一体誰がやるんです!?』

崩れ落ちる老人のストップ・モーション。間髪入れず「私だけの十字架」。

長坂脚本+天野演出は“絶対外さない”ハンセン×ブロディ級の不沈艦コンビ。

細かいことを言えば、前半と後半の不連続性、今ひとつ説得力の無い殺人の動機など弱いところはあるのですが、ラストの絵柄一発で全部帳消しです。

現実には出来なかった復讐を映画の中で実行したたった1本の主演作。その映画を観て、刑事を志した男。

互いが追憶の過去を演じる事で再現されたラストシーン。号泣です。

大滝秀治という人は善人演っても極悪人演っても、味わいと存在感のある役者さんでした。ご冥福をお祈りいたします。

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特捜、リメイクするそうですが、やめてください。ポスター見ただけでSAN値が下がりました。こんなつんつるてんのガキンチョと華の無い半端中年並べて何をしようって言うんですか。いくら長坂脚本でもこの面子じゃあ・・。大滝さん観たら怒るだろうなぁ・・。