デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

拒絶と制止の叫び声。 猿の惑星:創世記(ジェネシス)

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「NOォオオォオ!!」

「嫌だ!」という拒絶の意思表示であると同時に「やめろ!」という制止の叫び。

チンパンジー、シーザーが最初に手に入れた“言葉”は、怒りと悲しみとリーダーシップを具現化した二文字でした。

猿の惑星:創世記ジェネシス)」(2011年/ルパード・ワイアット監督)

シリーズ3作目「新・猿の惑星」で生を受け、4作目「猿の惑星・征服」で猿の指導者となるチンパンジー、シーザーの誕生を全く別の視点で再構築した仕切り直しリメイク。

旧シリーズでは、未来世界からタイムトラベルしてきたジーラとコーネリアスの息子というメビウスの輪的展開だったので、ミッシング・リンクは繋がったものの、“何故、猿が知能を持ったのか?”の疑問には答えていませんでした。

今回は、アルツハイマー改善薬の動物実験中に知能を得たチンパンジーの子供という直球設定。

薬物投与によって驚異的な知能を獲得した一匹のチンパンジー(♀)が突如暴走。実は妊娠中でお腹の子供を守るためだったのですが、下された決定は殺処分。子供は殺すに忍びなく研究所員ウィル(ジェームズ・フランコ)がこっそり自宅に持ち帰りペットに。

特殊なDNAを引き継いだそのチンパンジーはシーザーと名づけられ、ウィルとの信頼関係を育んでいきますが…。

しかし、ある事件によって霊長類保護施設に収監されたシーザーは仲間から疎外され、人間から虐待を受け、自身の在り方に疑問を抱き始めます。

今回の猿は着ぐるみ+特殊メイクではなく、WETAデジタルのCGI。いつもなら否定的な物言いをしているCGですが、今回は○。

猿という群体を個体キャラとして描き分け、表情ひとつ、指先ひとつで演技させています(マスター・データとなる演技者はアンディ・サーキス)。

逆に人間側の描きこみが圧倒的に不足しており、そこを非難対象にしている人もいますが、視点をシーザー寄りに固定した事が吉と出ているように思います。

人間不信と仲間を率いるリーダーの自覚が、迎えに来たウィルを拒んでしまう(悲壮な決意で自ら檻の扉を閉ざしてしまう)あたりはグッと来るものがあります。

そして「NO!!!」の叫びを合図に始まる大反乱。

人対猿。ゴールデンゲイト・ブリッジ上の一大攻防戦。

冒頭の実験素材として捕縛される猿というシークエンスから隠喩と暗喩の博覧会ですが、本作に関しては「あれがこれのメタファーで」的議論はどうでもいいですね。

何か却って作品を矮小化させているような気がして。

何度か挿入される火星探査船イカルス(1作目でチャールトン・ヘストンが乗っていたロケット)の失踪ニュースがベタですがナイス目配り。

地球規模のバイオハザードが一気に進行していく様を線だけで表現したエンド・クレジットも“いい感じ”です。