諸般の事情で頓挫してしまったキャメロン×デル・トロ×3Dの仰天企画「狂気山脈」。
せめてお話の骨子だけでもコミックで…。
(本当は“雰囲気だけでも”と書きたい所ですが、“名状しがたいもの”の雰囲気を画にするハードルは新人さんには高すぎました…)。
「狂気の山脈」
(2010年9月17日初版発行/PHP研究所刊/宮崎陽介画)
帯に踊っている「3D映画化決定!!」の文字が虚しい…。
1930年9月2日、ミスカトニック大学の関係者総勢30名と最新鋭の機材を積み込んだ船が南極に向けて出航しました。
目的は南極では発見例の無い先カンブリア時代の資材を採取すること。
しかし、彼らがそこで遭遇したものは…。
宮崎陽介氏は頑張ってはいますが、いかんせん画力が無い。
特にキャラ造型の弱さ(どう見ても東洋人)と背景の描き込み不足が致命的。
無駄に修飾語の多いラヴクラフトの文体(行間に滲む恐怖)を画にするには壊滅的なまでに情報量が不足しています。
ただ、展開だけは原典忠実なので、お手軽にストーリーを確認するには便利な1冊です。
一区切り毎に“クトゥルー神話研究家”森瀬繚氏の解説が挿入されるという構成も個人的には好感触(むしろこっちが主役で漫画は特典だと思った方がいいかも)。
巻末には何とアーサー・C・クラークのパロディ小説「陰気な山脈」まで収録。
総合力で評価すれば“大盤振る舞い”な本と言えるのではないでしょうか。
3Dじゃなくていいので、映画化の企画、再浮上しませんかねえ…(やっぱり観てみたいんだわ、デル・トロの「狂気山脈」)。