デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

この期待の斜め下は余りに想定外。ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

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『ガキシンジ…助けてくれないんだ、私を。また自分の事ばっかりね』

昨日ご紹介した貞本版単行本と真逆の台詞。

何でしょう、この感覚…以前にもこれと同じような…。

そうだ。「マトリックス/リローデッド」を観た時だ。

ボンクラ映画に熱狂していたら、作り手がボンクラを卒業してしまった“おいてきぼり感”。成熟しないはずのオタクが大人になってしまったら…。

 

(2012年/庵野秀明総監督)


(今回はちょっとネタバレ含みます。公開中なので未見の方はご注意を)

時間軸は何と「破」ラストから14年後。

サード・インパクトはカヲルの槍(カシウスの槍)によって阻止されたかに見えましたが、結局シンジは“ニア・サード・インパクト”を引き起こしてしまったようです。

初号機からサルベージされたのは碇シンジただひとり。綾波は消失。

シンジが覚醒したのは巨大戦艦ブンダー内部。その艦橋には、ネルフに敵対する組織ヴィレを率いる葛城ミサト大佐が。

一体何がどうなっているのか。一切の説明はなく、ただ、副官リツコを含む乗組員全員がニア・サード・インパクトの元凶たるシンジに怨嗟と憤怒の眼差しを…。

男はつらいよ」冒頭の夢オチなのではないかと疑りたくなる環境の変化です。

観客をシンジ同様「何がどうなっているんだ!?」な精神状態に置こうとしたのでしょうが、(我々に、と言うよりシンジに対して)あまりに説明が無さ過ぎ。

サード・インパクトの責任をシンジひとりに押し付けて憎悪の視線だけを投げつけた挙句、DSSチョーカー(「バトルロワイヤル」の首輪みたいなもの)まで嵌めるってのは…。あまりにシンジが不憫です。

特にミサト! あんた、「破」で「行きなさいシンジくん! 誰のためでもない、あなた自身の願いのために!」ってシンジけしかけとったやないか。

「あなたはもう…何もしないで!」
って作戦責任者の台詞かいな。リツコもゲンドウと結託してさんざっぱら手ぇ汚してきたくせにその変わり身はなんじゃらほい。


結果、「破」でヒーローになったかに見えたシンジは旧劇場版の抜け殻シンジに逆戻り(幼児退行も更に悪化)。

「序」「破」の伏線を全く回収しない、というのも気になります。

「よりによってまた3番目とはね」

「子供の都合に大人を巻き込むのは気が引けるな」

ネブカドネザルの鍵だよ」

「はじめまして、お父さん」

「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」

これらの台詞の意味するところは結局何だったんでしょ。

当初の予告に使われた映像(小レイを引き連れたレイとか)が無いというのも妙な気分。

一体どの時点で「Q」の基本骨子が固まったのか。元々この方向で行くつもりだったのか、全く別な事を考えていたが、何かの事情で大鉈振るう進路変更をしたのか。

確か新劇場版は直球勝負のエンターテイメントを目指してたはずだったよな…。

絶対にTV版~旧劇場版を「デビルマン」に見立てた「バイオレンス・ジャック」をやるつもりなんだと思っておりましたが、出てきたのは意外にも「マジン・サーガ」(暴走したマジンガーZが恐怖の大王となり、第三次世界大戦を引き起こしてしまう)でした。

※例によって情報量だけは氾濫しまくっているので1回観たくらいじゃ何とも言えないってのが本音ではありますが…。

狐につままれた観客を嘲笑うかのようにドラマは遂に最終章へ。

次回タイトルは「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」

“ヱ”ではなく“エ”。“ヲ”ではなく“オ”。つまり最初の表記に戻るという事です。“||”は音楽記号のリピートなのか終止線なのか(同じ線ではなく右側の方が太い)。

2013年公開…予定…らしいです(※)。

※追記:巡り巡って2021年1月23日になりました。