原作もアニメも知りません。なので、実写化云々、イメージ云々の話は割愛です。
比較のモノサシを持たない分、ハードルは低くなったわけですが、それでも“アイドル時代劇”程度の(いささかナメた)認識でおりました。
大誤算、でございました。
現時点における邦画アクションの最高水準なのではないかと思います。
これまではドニー・イエン先生のような“イメージに身体が追いつく”逸材があって始めて実現可能であった谷垣アクションが、見事に活写されております。
オープニングの鳥羽・伏見の戦いからフルスロットル。
従来の時代劇における殺陣とは一線を画す山中での集団白兵戦。
いささかカット割り過ぎの感なきにしもあらずですが、位置関係はきっちり把握できる編集になっています。
刀のみならず五体の全てを使う近接格闘戦は谷垣版《ガン=カタ》なのかもしれません(邦画のアクションでコマ送りしたのは若山富三郎の「子連れ狼」以来です)。
時代劇のお約束とも言える“1対多であっても斬り合いはタイマン(切り込むのは一人で残りは周りで刀を構えながら相手の周りをグルグル回っている)”という不思議現象も無し。
ワイヤーワークも嫌味がなく流れに乗せています。
オートレーサーがコーナー曲がる時のような傾斜姿勢で半円描いて走り込んだ時は「おお!」と声をあげてしまいました。
恐るべし佐藤“電王”健。
全体構成としては、エピとエピが分断されがちなので「ああ、そう言えばいたね、君」「ええっとあのエピはその後どうなったのかな」になってしまうのがちと残念。
他にも、ヒロイン役の武井咲の顔が膨らんで(リバウンドした時の)友近に見えたり、悪役の香川照之が(歌舞伎の稽古の反動か)カリカチュアし過ぎの役作りになっていたり、江口洋介が何の前振りもなく突然武侠ばりのジャンプを見せたりと、気になる所が多々ありますが、アクションの魅力で帳消しです。
「座頭市 THE LAST」に関わった人間(スタッフ、キャスト共)は全員本作を100回観て、己が才能の無さを臍の緒噛み千切って呪えばいいと思います。