デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

欺瞞と糾弾の石つぶて。追悼:大島渚。 日本の夜と霧

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『君達は一体いつになったら、その居丈高なポーズを捨て去ることが出来るんだ?! あの当時、君達が主体であった我々の運動の中に、少しでも論理があったか?! 少しでも道理があったか?! 目的を見失ったことが無い? 笑わせるな!』

大島渚監督がお亡くなりになりました。15日。肺炎。80歳。

数ある問題作の中でもやはり頭抜けているのは「絞死刑」と

 

「日本の夜と霧」(1960年/大島渚監督)


訃報を聞いて本棚の奥からヨレヨレになったビデオテープをひこずり出しました。久しぶりの鑑賞ですが、嗚呼、やっぱり凄い。

学生運動を通じて結ばれた野沢(渡辺文雄)と玲子(桑野みゆき)の結婚式。

社会人となった野沢世代の運動家と玲子世代の現役学生運動家、ふたつの世代が互いを、身内をただひたすらに糾弾するディスカッション・ドラマ。

疑心を欺瞞で返す双一方通行(?)な理屈の応酬。

『今こそ互いの仮面を引っぺがして真の祝いに到達できる!』


嫌だなあ、こんな結婚式。

段取りだけ決めて1発勝負のワンシーン・ワンカット

台詞を噛もうがトチろうがお構い無しにカメラは回る。実生活でも言い間違いはある。言葉が出ない時もある。とにかく、終わりまで言い切る事だ。何という緊張感。

現在と様々な過去を交錯させるジグゾーパズルのような構成になっているにも関わらず、混乱というものが全く生じない神業編集。

やがてこの内輪もめは連合赤軍に拡大投影されるわけですが、その予兆がそこかしこに。60年のリアルであると同時に預言書でもあります。

公開後4日で上映中止(松竹の独断)。大島はこの判断を不服として松竹を退社。翌年、有志5名と共に「創造社」を旗揚げします。

大島渚をただのバカヤロー親父だと思っている人がいらっしゃいましたら、(「戦メリ」とか「御法度」とかどうでもいいので)是非、本作と「絞死刑」を観てください。

小山明子さん、お疲れ様でございました。監督、安らかに。

※ご参考 

mandarabatake.hatenablog.com