デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

賭けがないと…。 超高層ハンティング(と映像特典)

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「(映像化に際しては製作者と)一緒に夢を見たいんですね。でも、ある程度の賭けがないと夢にはならないんですよ」

ビデオ巻末に収録された原作者・夢枕獏氏のインタビューです。

映像製作のセオリーとシステム。こうすればこの程度は売れる(しかし、それ以上は絶対に売れない)と言うソロバン勘定で作られた作品では原作者として夢を共有することが出来ない…。

また、キャラ先行の原作では読者イメージとの乖離は否めない。何より連載途上の原作(「キマイラ」や「闇狩り師」)は映像化と共にやってくるブームが引くと同時に失うものが多々ある。

キャラ先行でなく、連載途上でもなく、製作者の自由度が高い。むしろ原作から離れる事によって良いものが出来るかもしれない原作。

ある種の消去法により遡上に乗ったストーリー、それが、

「超高層ハンティング」(1991年/服部光則監督)

念流という思念兵器を使いこなす亜人種ASH(アッシユ)と、ASH殲滅のために(訓練により念流を会得した)武装科学組織JASEP(ジャセップ)の戦い。

エスパイ」「スキャナーズ」「Xメン」と続くサイキック・ウォーズの系譜に連なる1本です。

製作総指揮に実相寺昭雄、特殊造型に原口智生、絵コンテに樋口真嗣錚々たる面子。

キャストも敵方ヒロインに高木澪(イルマ隊長!)、味方ヒロインに西村知美と“それなりに”豪華。

全体的に“いい感じ”に仕上がってはいるのですが、脚本と演出にへっぽこぴーな箇所がいくつかあって、“うーむ”な印象を拭いきれません。

ASHの紋章とも言える背中の腫瘍はまるで生き物のようにも見えますが、特に能力は発揮せず。ただの飾り的お印。勿体無い。

念流の攻撃力はビジュアル的にも凄まじく、マシンガンの一斉射撃を内側から喰らったかのような人体破壊の末、血だるまになって息絶えるという壮絶さ。

この折角の能力を何故かここ一番では封印。ナイフ突き立てたり、拳銃で撃ったりのしょぼーい近接戦闘に。勿体無い。

西村知美が念流ですっ飛ばされるのですが、特に外傷も見当たらないままガクッ。てっきり気絶しただけだと思ったら絶命。え、死んだの、あれで?

主人公のJESAP訓練時代の思い出のアルバム。その場にいた4人全員が写っているスナップが何枚もありますが誰がシャッター押したんでしょ?

主人公の最後の決意もちいっと方向性誤まってないか?

合成がしょぼいのは致し方ないとして、念流の特撮がそこそこだっただけに、ドラマ部分の整合性(原作短編の膨らませ方)がイマイチだったのが悔やまれます。