デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

オカルトとリアルの絶妙なバランス。 ディスコード

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「(通信状態が悪くPCを持ち歩きながら)ハーイ、ママが見える?」

「見える。ねぇママ、後にいる人誰?」

何かが突然そこに“居る”怖さ(代表は角を曲がるとそこに“居る”「シャイニング」の姉妹)。

パラノーマルなんちゃらのような、“とんだ一杯喰わせもの企画”とは違う、低予算ながら作劇の巧さで魅せるスーパーナチュラル・ホラーです。

「ディスコード」(2012年/ニコラス・マッカーシー監督)

私と姉、二人の娘を厳しすぎる躾と過干渉で支配してきた母親が死んだ。

姉はそれでも母親なんだから葬式くらい出ろと言うけど私は嫌。二度とあの家には戻らない。

しかし、姉は従姉妹に預けている娘と交信の最中に姿を消し、以後音信不通。

従姉妹に頼まれて仕方なく家に戻ったけど…この家は何かが変だ…。

前半はオカルト・チックな家ものホラー。

まずカメラワークが巧い。

FIX、手持ち、移動と次々カメラを持ち替えるものの、無駄に割ったりせず、ゆったりとそれでいて不安を煽る映像を作っています。

奥行きを効果的に活用した視点移動は、褒め過ぎは承知で“キューブリックっぽい”かな、と。

そして、妹アニーを演じたケイティ・ロッツ(写真上)が巧い。デビュー当時のミシェル・ロドリゲスを思わせる市井のやさぐれ感が良く出ています。

オカルトと言えば霊能者。ヘイリー・ハドソン演じるアニーの同級生スティービーは実に病的。“見たくもないものが色々と見えてしまう”為に疲弊している女霊能者をいい感じに演じています(写真3枚目)。

16年住んでいても気がつかなかった“隠し部屋”。死して尚、母が隠そうとしたものは何か。それを暴こうとする意思はどこから。

派手さはないものの現実には有り得ない超常現象をポイント、ポイントに挟んで、クライマックスは「羊たちの沈黙」ばりのリアル・バトル。

あちこち説明不足の感は否めませんが、一粒で二度美味しいホラーとスリラーの重ね焼きです。