哀。 GUNSLINGER GIRL[北米版BD-BOX]
両親の死体の傍で一晩中暴行を受けた少女、保険金欲しさに両親に轢き殺されかけた少女、ベッドの外の世界を知らず両親の諍いの種になっていた少女…。
忌まわしい記憶の抹消と一部感情の切除。その代償として彼女たちが得たもの。
それは自由に動く手足、人並み外れた身体能力。そして完全無欠の殺人技術。
「GUNSLINGER GIRL[北米版BD-BOX]」(2003年10月8日-2004年2月18日放送/浅香守生監督)
舞台はイタリア。公益法人社会福祉公社は、表向きは障害者支援団体。
しかし実態は、身体に障害を持った(もしくは心に癒せぬ傷を負った)少女たちを洗脳し、“義体”と呼ばれる人口の肉体を与え、超法規的活動に従事させる対テロ組織でした。
“条件づけ”と呼ばれる感情操作により、命令に忠実な、人を殺すことに躊躇の無い殺人機械となっていく少女たち。
彼女らには“担当官”と呼ばれる上司兼お世話係が。
担当官は彼女らにとって父であり兄であり恋人であり。
担当官の命令に従うこと、担当官を守ること、担当官に褒められること、それが彼女らの生きがい、幸せ。
しかし担当官にとって彼女らは単なる武器、道具、備品。求めても決して得られぬ愛。
開発途上の義体には問題も多く、寿命は限られ、記憶障害や味覚障害などの副作用も。
もうどこまでも哀しいお話です。少女×(ニキータ+攻殻)と言ってしまえば簡単ですが、この哀しみの深さが、そんな簡単な図式を頑なに拒んでいます。
GUNSLINGER はGUNMAN、KILLERと同義語。拳銃ぶら下げた女殺し屋。
タイトル通り、少女たちは自分専用の銃火器を持っています。
主人公ヘンリエッタの得物は「FN P90」(ファブリック・ナショナル・プロジェクト・ナインティ)。写真上でぶちかましている奴です。これをアマティのヴァイオリンケースに入れて持ち歩いています(サイドアームはSIG P239)。
OPでは彼女らが自分の持ち銃を扱っている映像に名前を被せる手法をとっているのですが、ここで「おお!」と思ったのが、アンジェリカ(写真3枚目の娘)。
サブマシンガン連射時の反動描写が物凄く“いい感じ”で、「ああ、このスタッフは銃火器の描写をきちんとやってくれているんだなぁ」と(私ピンポイントで“掴みはOK”)。
アンジェリカが扱っていたのはステアーAUG。非常に特殊なフォルムを持つオーストリア製のアサルトライフルです。
シルエットが分かるように銃だけの写真も載せておきました(写真下)。
一見して分かるのは薬室がグリップよりも後方にあること。作動機構をトリガーの後方に配したこの形をブルパップ方式と言います。
WIKIの受け売りを恥ずかしげも無く披露すると、「ブルパップ方式は銃身を短くすることなく銃を小型化することが可能で、また薬室をグリップより後方に配置することにより反動を制御し易くなり、集弾性が向上する利点を持っている」んだそうです。
年端もいかぬ少女を“改造”によって自身の制御下に置くことの非倫理性を批判する向きもあるようですが、作り手がその事に無自覚であったとは考えにくいので、その“気持ち悪さ”も本作の魅力の一部なのだと思います。
魅力と言えば音楽。映画的サウンドトラックを意識した伴音は物語に一層の厚みを与えています。
北米版DB-BOXは2枚組。第一期全13話収録。国内版は29,400円ですが、北米版ならAmazonで2,826円。ほぼ1割です。