ショボショボのCG、ウルトラセブン並のセットと宇宙人、間違いだらけの軍事描写と駄目出し無限大は承知の上で敢えて言います。
「バトルシップ」より面白い。
「バトル・オブ・パシフィック」
(2012年/サンダー・レヴィン監督)
「バトルシップ」(以下、本家と呼称)同年製作の音速後出しジャンケン。
退役して博物館となる戦艦USSアイオワ。
インチョン湾から最後の航海に出発したアイオワは、南北国境付近の村から救助信号を受信。
航空母艦隊に報告をするも音信途絶(一足先に全滅)。艦長の判断で航路変更したアイオワは現場に向かいますが、謎のステルス戦艦から電磁パルス弾(EMP)を喰らって電子機器が全てオシャカに。
相手は誰だ。北朝鮮か? 北にステルス艦などあったか? 中国の支援か?
アメリカ本国は中国・北朝鮮に対し核攻撃の準備を。
一方、目も耳も奪われたアイオワですが、第二次世界大戦を経験している超ベテラン艦にはアナログ機材がてんこ盛り。
伝声管による音声電話で指示を出し、真空管による1944年製短波ラジオで本国と更新し、VHSビデオで襲撃時映像を再生し…。
謎のステルス艦隊vsアナログ頼りの老朽艦。実に燃える展開じゃありませんか。
アイオワを仕切るのはマリオ・ヴァン・ピーブルズ! ペンタゴンを仕切るのはカール・ウェザース! イケメン俳優出番無し!
本家は、主役の男のドラマ部分が駄目駄目で。おめーの私生活にも恋愛にも兄弟感情にも何の興味もないわい。いいから早くドンパチせんかい!なイライラが募りましたが、本作は違います。
冒頭4分で航空母艦隊全滅! アイオワも出港した途端、航路変更、EMPアタック! 本国では第三次世界大戦準備!
景気が良い事この上無し。
博物館になる老朽艦の大活躍という筋立ては、観ようによっては、博物館になった戦艦(USSミズーリ)の現役復帰を描いた本家の前日譚でもあります。
観る順番はまず本作、続いて本家でしょう。
余談ですが、オープニングで小さく出るタイトルは「AMERICAN WARSHIPS」ですが、エンドクレジットでドドドーンと出るタイトルは「AMERICAN BATTLESHIP」。
タイトルのバージョン違いはよくある話ですが、ひとつの作品の頭とお尻でタイトルが変わるというのも珍しい。
ついでに言えば邦題も滅茶苦茶。どう考えても戦場になっているのは「パシフィック」じゃないだろう。
※参考:「始まりと終りの場所。 バトルシップ」→2012年11月5日