同じ“~オブ・ザ・デッド”ですが、昨日の「ダスク・オブ・ザ・デッド」のような勘違い邦題ではありません。
フアンとは主人公の名前。本作はロメロを父に、「ショーン・オブ・ザ・デッド」を兄に持つ(その志において)正統なゾンビ映画の継承者です。
「ゾンビ革命-フアン・オブ・ザ・デッド-」
(2011年/アレハンドロ・ブルゲス監督)
俺の名はフアン(JUAN)。40過ぎて無職。いや正確にはコソ泥だが。趣味は人妻との密会。暇な時は相棒のラサロと手製のいかだで魚釣りだ。
ラサロはいい女を見るとその場でズボン下してナニをしごいてしまう最低な奴だが、息子想いのいい親父だ。
ラサロはキューバなんか捨ててマイアミに行こうと言うが俺は反対だ。働くなんて御免だし、この国なら黙っていても面倒を見てくれる。
それに俺はしぶとい男だ。マリエル事件もアンゴラ内戦も平和時の非常時も切り抜けてきた。ただ、最近この街は(いつにも増して)ちょっと変だ。
やたら凶暴になった住人が他人を噛み殺していやがる。政府発表はアメリカの武器支援による反体制派の仕業らしいが、違うだろ。あれはどう見ても…。
はい、ゾンビです。
何が起きても怯まず騒がず金儲けに繋げようとする馬鹿陽気さに初めのうちは“おお、こいつら本当に最低だぁ”“流石、ラテンの血は明るいぜ”などと笑っていましたが、キューバならではの台詞がポンポン飛び出してくると笑いの質もシニカルに。
『敵と味方を見分けてよ!』『この国では難しい』
車で景気良くゾンビを轢き飛ばしながら『帝国主義の犬どもめ!』
車がエンストすれば『ロシア人め! クソ車を持ち込みやがって!』
いよいよ国外脱出を考えねばならなくなると『資本主義の餌食になる時が来たようだ』
ゴアシーンは控え目ですが、モブシーンとかはしっかりあり、大作チックな仕上がりになっています。
フアンの心にしっかりドラゴンが宿っているのも好感度大。
ところで、大量のゾンビに囲まれて絶体絶命のフアンらを救ったでっかい眼鏡に髭面のアメリカ人、あれはどう見ても…。
こういうリスペクトの仕方もあるんですねえ。
「28週後」のヘリチョンパに匹敵する瞬殺アイデアは見ものです。
キューバで映画を撮るには、政府機関に脚本を提出して承認を受けなければならないんだとか。
下手すると小劇場単館短期公開でお茶を濁されて封印、という事もあり得たそうです。
それを思うと今私がこのビデオを観ているというのはひとつの奇跡なのかもしれません。