デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

田舎の怖さに国境無し。 ルームズ・フォー・ツーリスト

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ブエノスアイレスに程近いメキシコの田舎町。長距離バスから降り立った5人の女。

何故か全員一人旅。偶然の出会いでしたが目的地は同じ様子。

ここから電車に乗り継ぎ…なのですが、駅はどっち?

『今から教会に行くから途中まで案内してやろう』親切な売店のおっちゃん登場。

教会では大勢の信者がトランス状態。ようやく駅についたら駅員の爺さんが発車時刻のプレート外している最中。

『残念。到着が早まってな』

列車は1日に上りが1本、下りが1本。途方に暮れる彼女たちの前に親切な青年が登場。

『旅行者に安く宿を提供しているんだ。よかったらどうだい?』

案内されたのは、町外れにある瀟洒な宿。勿論、何もない訳は無く…。

「ルームズ・フォー・ツーリスト」(2004年/アドリアン・ガルシア・ボグリアーノ監督)

以下詳細は割愛しますが、展開の仕方がえらいこと上手です。お約束を積み重ねているだけなのですが、語り口が絶妙。

どんどん拡大していく善人と悪人の境界線。線路の先に主人公が見た絶望感。

町の外に手引き役がいる辺り、まんま「ホステル」ですが、製作はこちらが先(「ホステル」は2005年。しかも、製作開始はこの4年前)。エンタに徹した「ホステル」よりもホラーとして印象深い仕上がりになっています。

画面は16mmを思わせるガサついたモノクロ。スプラッタのどぎつさを抑え、雰囲気を醸成していますが、現代の田舎の怖さを表すにはカラーの方が効果的だったかも…。

と思ったら、DVDの特典として付いている予告編はカラー。しかも、きちんと色彩設計されているじゃありませんか。

宿の廊下のランプシェードの青とか、「よ、アルジェント!」と声をかけたくなる美しさ。

カラー版、もしあるのなら観てみたいです。

余談ですが、本作エンドクレジットの最後に「AYUDA ESPIRITUAL」の表題で精神的支柱となった先達(作品含む)の名前がずらっと並べられています。

Dario Argento, Shinya Tsukamoto, John Boorman, Tobe Hooper, William Friedkin, Lucio Fulci, Mario Bava, Michelle Soavi, Brian de Palma, Sam Pekinpah, etc。何故かShindo Kaneto。Shiryo no wana(死霊の罠)なんて名前まで。

信用に足る趣味の良さだと思います(笑)。