離婚調停中の女が、取り急ぎ入居した賃借物件でエライ目に遭う、というと「ダーク・ウォーター」(「仄暗い水の底から」)ですが、ネタ的には1stルパン「タイムマシンに気をつけろ」のホラー・リメイクと言った方が近いかもしれません(我ながら酷い例えだ)。
「恐怖ノ黒電話」(2011年/マシュー・パークヒル監督)
離婚調停中のマリー(ラシェル・ルフェーブル)は環境を変えようと古びたアパートに転居。
室内には既に回線の繋がった黒電話が。
入居早々かかってきた間違い電話。それはその部屋に住んでいた過去の住人からのもの。
昔の住人が別のどこかから掛けてきたのではありません。過去の部屋から現在の部屋へ時間を遡って(飛び越えて)掛かってきた混線電話。
本来なら、男に捨てられて部屋で首をくくっていたはずの女でしたが、マリーのアドバイス(そんな男は殺すべき)を真に受けたために現在の歴史に微妙な変化が。
妄想系神経症な女は、しつこくマリーに粘着。自分の事をマリーに話した管理人を“おしゃべり野郎”と罵って殺害。その瞬間、歴史が変わり管理人室には見たことのない女が。
マリーの新しい恋人(スティーブン・モイヤー←デビルズ・フォレストの壊れたお父ちゃん)も少年時代に殺され、現代には存在しない人に。
“消しゴムで消しても鉛筆の跡は残る”…マリーの記憶のみ上書きされない逃げの布石もきちんと打っているあたり芸が細かいです。
やがて狂った女の魔の手は少女時代のマリーに。
女が少女マリーに煮えた油をかけると、現在のマリーの体にみるみる爛れが…。
DV夫(接見禁止令完全無視)と粘着狂女という地獄のサンドイッチ・ラリアットに反撃を試みるマリーでしたが…。
アイデアは良いし、それなりのハッピーエンドでもありますが、カタルシスというものを見事に放棄しているので、暗~い印象しか残らないのが残念無念。