3部作の内、ソフト化されている1部2部を北米版BDで視聴。
各々ランニング1時間強ということもあり、一気観できるパワーは十分に内包しているのですが、グッとこないと言うか、何とも煮え切らない出来でございました(「凄い(巧い)なあ」とは思いますが、「燃える(泣ける)なあ」とは…。)。
「マルドゥック・スクランブル 圧縮/燃焼」(2010年2011年/工藤進監督)
BD再生の第一印象は“画が汚い”。
シャープネスを無理矢理上げたようなガサついた画調。黒い部分が綺麗に潰れず白いモヤがかかったような状態。
意図的な演出かもしれませんが、BDに期待する画質ではありません。
冒頭映し出されるのは近未来都市(マルドゥック市)を縫う光の高速道路。遠くに市のシンボルである螺旋階段状のモニュメントが…(写真1枚目)。
ううむ。今更こんな陳腐な未来都市見せられてもなあ。「メトロポリス」から一歩も前進していないではないか。
後から今と変わらぬ普通の信号機交差点とかが出てくるのも如何なものかと。
裏社会のショー・ギャンブラー、シェルに殺されかけた少女娼婦ルーン=バロット(林原めぐみ)が、生命の保護などに限って禁じられた科学技術の使用を認める「マルドゥック・スクランブル-09法」に基づき全身に金属繊維による人工皮膚を移植され蘇生。
常人より遥かに優れた身体能力と体感覚、あらゆる電子機器を触れずに操作する能力を得たバロットは、委任事件担当捜査官ドクター・イースター、人語を解する金色のネズミ型万能兵器ウフコックと共にシェルの犯罪を暴いていく…。
設定は昔懐かしいサイバーパンクのテイストを色濃く残すもので、それ自体は悪くないです。
特に、体を複数の次元に分割し、亜空間に貯蔵してある物質を使って様々な兵器や道具に変化(ターン)することができるウフコックのキャラは秀逸。
哲学的な思索をするウフコックと、純粋に“愛されたい”と渇望するバロットの対比もいい感じではあります。
しかし何でしょう、この索漠とした虚しさは。完全版(R18+)の過激描写もR18にするために過激にしてみました的本末転倒さが見え隠れしてどこか不自然(バロットがドクターにプレゼントを渡す追加カットとかは良かったですが)。
ストーリーも設定を活かしきれていないというか。
ルーの犯罪の記憶が記録された高額チップを奪取するためにカジノに行く(盗むのではなく、正面から勝負して入手する)というのも、理屈は分りますが、どこか無理矢理な感じ。
この「チャーリーズ・エンジェル」や「ミッション・インポッシブル」なら後半への繋ぎ程度のエピが、実はお話の幹というのがまた驚き。
ゲームを通してバロットが進化・成長していく話だったのか。もはやシェルの犯罪なんかどうでもいいな。
最終巻「排気」が出たら頭をゼロリセットした上で、再挑戦しよう。
EDは「圧縮」が「アメイジング・グレイス」、「燃焼」が「AVE MARIA」で歌はどちらも本田美奈子。負けています。本編が。彼女の気迫に。
余談ですが、ウフコックやドクターが自身の有用性を証明し続けなければならないという設定は、成果を上げ続けないとリストラされるサラリーマンのメタファーみたいでちょっとツライものがありました。