子供の頃は、猿やモグラが巨大化するだけの非怪獣モノにはイマイチ食指が動きませんでした。
どこか華が無く、地味。デザイン的にも手を抜いているような…。
でも実際には脚本やミニチュアなど様々な試みがされていた訳で、再見して眼から鱗な話が多々。
中でも眼を見張ったのが、
パーティの帰り道、濃霧のため山道で迷子になった万城目ら(レギュラー3名+ゲスト3名が2台の車に分乗)。
一平と友人が周りを探索中に底なし沼に転落。間一髪、引き上げられたものの、このままでは凍えてしまう。近くに洋館を発見した一行は一夜の暖をとるために邸内へ。
この館に行くためには、沼に掛けた細長い橋を渡らねばならないのですが、異世界へのアプローチ(もしくは通過儀礼)として秀逸な設定です。
壁の肖像画、暖炉、イスや皿の調度品など館の内装も素晴らしい出来(写真2枚目)。
で、ここに巨大なクモがいるわけですが、本作最大の特徴は、このクモが単に巨大化したクモなどではないという事。
万城目が戯れに語ったクモ男爵の話(クモ収集家の男爵の娘が毒蜘蛛タランテラに噛まれて発作を起こし、底なし沼に落ちて死亡。失意の男爵は発狂。しかし娘は蜘蛛の姿になって帰宅し、父娘はふたりきりで静かに暮らしたという)を信じるなら、このクモは(元)人間です。
怪獣話と言うよりは、怪談・奇譚という箱に入るエピなんですね。
蜘蛛の死と共に崩落し炎上する洋館。館は蜘蛛の思念が紡いだ幻だったのかもしれません。
さて、クモ男爵を語る時、避けては通れない(?)のが、“スタッフの手”。
館が崩れ落ちるシーンで、壁を裏側から突き崩すスタッフの手がはっきりくっきり映りこんでいるというアレです(写真3枚目)。
カラー化の話を聞いて思ったのが、“あのスタッフの手にも着色するのか”という事。
わくわくして観ておりましたら、何と件のカットには炎のエフェクトが追加されており、巧妙に手を隠しておりました(写真一番下)。
まあ、当然と言えば当然の処置ですが、何か残念です。