昨日ご紹介した「リアル・スティール」の原作は、リチャード・マシスンの「STEEL」。
映画化された“感動の親子もの”とはかすりもしませんが、“男の意地を賭けた戦い”という意味では見事にシンクロする内容です。この原作を映像化したのが、
「トワイライト・ゾーン/シーズン5第2話・四角い墓場」(1963年10月4日放送/ドン・ワイズ監督)
(※話数、放送日はアメリカのもの)
人間同士のボクシングが禁じられて6年(バーの壁には1974年のカレンダーが)。
元ボクサーのケリー(リー・マーヴィン!)は現役時代こそその強靭な肉体から“STEEL”とあだ名されていましたが、今はロボット・ボクサーを担いで相棒のメカニックと共に巡業するドサ周り生活。
しかも唯一の所属選手“バトリング・マクソ”は、旧式(B-2型)な上にポンコツ。修理の金なんぞどこを探しても…。
顔馴染みの興行師からようやく試合を回してもらったものの、控え室でマクソは腕のバネが外れて戦闘不能。
ここで試合をすっぽかしたら、二度と仕事を回してもらえなくなる。何より財布に金が無い。
ケリーは自らがロボットに扮してリングに立つ決意を。
『たのむからやめてくれ、殺されるぞ! 相手はB-7型だ! わかっているのか? B-7型なんだぞ! ズタズタにされるんだぞ!』
『なら死ぬまでだ!』(この部分は尾之上浩司訳のハヤカワ文庫版より)
果たしてケリーの男の意地の行く末は…。
ボクシング・ロボットの造型は、人間にラバーマスクを被せただけのお手軽メイクですし、手さばき足さばきも人間チックです。
マーヴィンのロボット・メイクもお笑いと言ってしまえばそれまでです。
しかし、ボッコボコにされながら(正体がばれないように)「ガウンだ、ガウンをかけろ!」と指示を出し、控え室で立つこともできず倒れこみながら「金だ、金を受け取って来い!」と呻くマーヴィンにグッと来ない奴がいるでしょうか。
場末の、どん詰まりの、食い詰め者の悲哀と意地が色濃く滲む名編だと思います。
聞けば、リチャード・マシスンのトワイライト・ゾーン・フェイバリットなんだとか。
原作本は(映画化のおかげで)復刊しているので、読まれてみるのも一興かと。