人間同士の格闘が禁止され、ロボットがこれを代替する近未来。
ボクサーとしての居場所を失い、父親という現実から逃げ、ドサ周りのロボット・ボクシングで糊口を凌ぐも結局は借金まみれでトンヅラ暮らし。
絵に描いたような駄目男にやってきたプライド復権のチャンス。
そう、男はいつだってやり直せる…。
ボクシングに全てを捧げてきたチャーリー・ケントン(ヒュー・ジャックマン)。
しかし、生身の格闘が禁じられ、その夢を絶たれてからは日々是負け犬。現役時代に自分をKOした元ボクサーが主催するロボット対牛の“異種格闘技戦”に出場するも、ロボットをスクラップにされた挙句に賭けの借金まで背負う始末(当然トンヅラ)。
そんなチャーリーに別れた妻死亡の知らせ。二人の間には10年以上逢っていない息子・マックスが。
ひと夏をマックスを過ごすという見せ掛けの懺悔をカモフラージュに親権を妻の姉夫婦に売却するという“親心って何?”な人でなしプレイを見せるチャーリー。
初対面の父親に出会い頭に売り飛ばされたマックスは不信感マックス(当然だ!)。
しかもチャーリーはひと夏をマックスと過ごす気なんぞさらさら無く、元カノ(昔所属していたジムの娘)に押し付けて、自分は新たに購入したボクシング・ロボット“ノイジー・ボーイ”で巡業に。
この“ノイジー・ボーイ”のデザインが最高。腕と胸部に極太明朝体で“超悪男子”。世界各地を巡業するうちにオーナーが変わって日本仕様にカスタマイズされていたのです。
『Right! Left! Uppercut!』の指令にも無反応。
『駄目だ、壊れている』と嘆くチャーリーからインカムを受け取ったマックスが、
『Migi! Hidari! Apperkatt!』と叫ぶと即座に反応。
『どこで日本語を覚えたんだ?』
『ゲームだよ。日本のゲームは最高さ』
マックスぱチャーリーの巡業に強引に同行(ノイジー・ボーイは初陣で大破。相手のセコンドと言うか操縦者はどう見ても段平のおっちゃん)。途中、廃材置き場で1台のロボットを拾います。
それは旧世代のスパーリング用ロボット。プレートに書かれた名前はアトム。現在では珍しいシャドー機能(操縦者とシンクロして動きを学習する)を備えていました。
アトムと共にロボット・ボクシングの世界選手権“リアル・スティール”を目指すマックスとチャーリー。その頂点にいるのは無敵の王者ゼウス。
お気づきのように本作は「ロッキー」「オーバー・ザ・トップ」に材をとったスタローン賛歌であり、日本のアニメ(格闘/ロボット)に対する賛歌であり、全ての駄目男に捧げるアンセムです。
当然、最大の見せ場はアトム対ゼウスの一騎打ちですが、本当のクライマックスは別にあります。
ひとりのボクサーとしてアトムを操る父親チャーリーの姿。これこそ、マックスの望んだものであり、羨望の眼差しを以って父を見上げる息子の視線こそ本作のテーマです。
マックスがチャーリーの元カノと葛藤無く打ち解けるとか、死んだ妻の姉夫婦とチャーリー間の諍いが少ないとか、当然あるべき人間関係の軋みがない事を批判する向きもありますが、そんなシーン見たいか?
いいじゃないですか、スカッと一本調子なハリウッド展開で。
本作クレジットで一番驚いたのは“原作:リチャード・マシスン”の文字。
あのマシスンが?! 感動の親子モノを?!
勿論、そんなものは書いていません。本作の原案的原作はマシスンの「STEEL」。これを映像化したのが、トワイライト・ゾーンの「四角い墓場」。こちらに関しては明日。