デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

少年よ…。 フリクリ FLCL[北米版BD-BOX]

イメージ 1

小学6年生のナンダバ・ナオ太は、ある日謎の女が乗ったスクーター(ヴェスパ180ss)に景気良く撥ね飛ばされてキリモミ・シュート。

女はナオ太をマウスtoマウスで蘇生させると、持っていたベースギター(Rickenbacker 4001 Azureglo)で顔面をフルスイング。

唖然茫然のナオ太を尻目に走り去るヴェスパ。

数日後、何故かヴェスパ女がナンダバ家住み込みの家政婦に。おまけにギターで殴られたおでこから角のような突起物が。やがてムクムクと肥大化した突起物はロボットとなって分離。

筋だけを追うとあっと言う間に置いてきぼりになります。まずはあまり深く考えずにパンクでキッチュな映像と音楽に身を委ねましょう。

フリクリ FLCL[北米版BD-BOX]」(2000年-2001年/鶴巻和哉監督)


ガイナックス&Production IGによるOVA作品(全6巻)です。

『凄いことなんてない。当たり前の事しか起きない』

小学6年にして諦観の境地に辿り着いたナオ太を翻弄する謎の女ハルハラ・ハル子(自称19歳の宇宙人)。

当たり前の事どころか、常識を全力でフライングした異常現象に次々巻き込まれるナオ太。

ナオ太の父カモンの声をアテているのが松尾スズキという事もあってか、どこか大人計画(今のじゃなくて温水洋一がいた頃)の不条理劇に近しい匂いも。

ハル子はナオ太の頭を利用して(ナオ太の頭をチャネルとして別の次元から)何か望むものを取り出そうとしているのですが…。

常識をぶっちぎった現実に押し流されながら直面し立ち向かおうとするナオ太(とその周囲の人達)。

『タックンはまだ子供だから…』

少年が大人に(男に)なる(もしくは背伸びをしないあるがままの自分になる)、というのはかくもファンタスティックな通過儀礼なのですね。

全編ミュージック・クリップと言って良い程、the pillowsの音楽と映像がシンクロしまくり。

角からロボットを分離させた後、ナオ太の頭がカラッポになっている(トップレス)とか、謎の機関(広域宇宙警察)の名前が「フラタニティ」とか、エキゾチック・マニューバを思わせる描写があったりとか、後の「トップをねらえ2!」に繋がる設定が散見できるのも楽しいです。

※ナオ太が自身の角から分離したロボット、カンチを召還するシーンとか、完全に『ディスヌフ、来い!』の原型。

北米版BDは1枚に全6話が収録されて3,490円(amazon)。国内版DVD1話分以下(因みに国内版BD-BOXは定価15,750円)。

BDには全話に鶴巻監督の音声解説がついています。細かい設定や裏話などを聞いた上で再視聴すると1回目には見えなかった色々な景色が見えてきます。併せて是非。