爽やかな音楽に続いて出てきたのは露天風呂で寛ぐ日本女性。
「おや?」と思う間もなく、丹前姿のお姉さんに襲い掛かるゴリラの着ぐるみのシルエット。悲鳴と共に障子に飛び散る鮮血。ひゅ~どろどろ風な分かりやすい音楽に乗ってメインタイトル。
「双頭の殺人鬼」(1959年/ジョージ・P・ブレイクストン監督)
舞台は多分箱根(宮ノ下の富士屋ホテルが写っている)。地表から煙の噴き出す崖の上(道らしい道がない)には謎の研究所が。
この研究所でドクター・ロバート鈴木(中村哲)と助手のタラは良く分からない人体実験を繰り返しておりました(酵素による肉体と精神の変化?)。
地下施設の檻の中には醜く顔の崩れた女が。そして昨夜、民家を血の海にしたゴリラ男が。
Dr.鈴木はゴリラを射殺して遺体を焼却(噴煙と炎に包まれた部屋があるのですが、ひょっとして火口に直結しているのか?)。
どうやら女もゴリラも人体実験の失敗作のようです。
困ったなあ、もう被験者がいないぞ(当たり前だ!)。と悩んでいたら海外特派員のラリー君が取材に。
おお、丁度良いところへ。君歳幾つ? 35? 丈夫そうだね。何か大病したことある? 無い? 最近SEXした? してない? そう、そりゃ良かった。まあ1杯飲みなさい。
先生、お構いなく…ああ、何だか眠く…。
ここで、ラリー君を拉致監禁して手っ取り早く改造しちゃうのかな、と思いきや、謎の注射(血清?)を右肩に打っただけ。
後日、東京に戻ったラリー君と一献交わした鈴木先生は、日本を案内したいと言って再び箱根に連れてきて豪遊。助手のタラ(美人です)を使って色仕掛け。
足止め喰らわして経過観察&データ収集って事のようですが、回りくどい事やってるなあ。
この温泉豪遊シーン(芸者と炭坑節とか踊っちゃう)とアメリカからやって来た妻との修羅場が中盤の見せ場(おいおい)。
やがてラリーの体に変異が!
手には剛毛、右肩にはつぶらな瞳がこんにちは(写真2枚目)。
黄昏たラリーは近所の寺の住職に悩みを吐露。最初は「英語は通じないか。その方がこちらも気が楽だ」とか言っていたくせに最後はスルーされた事にキレて(?)住職殺害。
そうこうしている内に肩は膨らみ、瘤になり人面痩になり、遂には立派な頭になって「よう、兄弟!」(いや、そんな台詞は無いんだけどさ)。
双頭の怪物となって殺戮を繰り返すラリー。温泉街は恐怖一色。
はてさて、ラリーと鈴木の運命や如何に…。
72分が結構長い(笑)。ただ怪奇映画としての雰囲気は良く出ています。監督が日本在住で協力が新東宝って事もあって、日本の描写も十分許容範囲。
「死霊のはらわた3/キャプテン・スーパーマーケット」のグッド・アッシュとイーブル・アッシュは本作のオマージュだそうです(写真3枚目。横でピースしているアホタレはご存知サム・ライミ)。
写真検索をしている時に撮影中のスナップと思しきカラー画像を発見しました(写真一番下)。当時のパトカー、救急車の形とカラーリングを知る上で結構貴重なんじゃないでしょうか。