『こんなものは芸術ではなぁい!!』
丹波哲郎のこの一喝にこそ、本作の全てが詰まっております。
「盲獣vs一寸法師」(2001年/石井輝男監督)
あの石井監督が「恐怖奇形人間」以来30年ぶりに江戸川乱歩原作を映像化。
しかも「盲獣」「一寸法師」という異なる作品をアナーキー&フリーキーに融合(脚本も石井監督)。「マジンガーZ対デビルマン」の如き豪快さ。
これだけで期待値上がり放題ですが、世間の思惑など知った事かとばかりに我が道を行く石井先生は我々をマッハで抜き去り、最早背中も見えません(笑)。
まず映像が凄い! このご時勢にのっぺりぺっかりビデオ撮り(撮影も石井監督)。
そして音声。モノラルです。
更に役者。半分以上素人です(主役のリリー・フランキーは本作が役者初挑戦)。
自主映画かよ!(プロデューサーも石井監督)!
反面、赤紙が飛んだのか、自ら進んで飛び込んで来たのか、部分的には超豪華。
特殊効果に西村喜廣。美術協力に原口智生。出演者に塚本晋也、手塚眞、園子温、中野貴雄と監督祭り。特別ゲストに及川光博と丹波哲郎。
絶対、監督が拝むか睨むかしたんでしょうね。
最大の見せ場は現職(当時)民主党議員・田中恵美子(クレジットは菊池恵美子)の特別出演(盲獣に乳を揉まれています)。
リリー・フランキーとリトル・フランキー、ダブル・フランキー夢の(?)競演も見逃せません。
せめてフィルムで撮ってくれていれば、それなりの雰囲気は出たと思うのですが…。
石井輝男2005年8月12日没。本作が(監督としては)遺作。合掌。