デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

萌×怖×涙。 黄昏乙女×アムネジア[北米版BD-BOX]

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“もう(私の声が)聞こえない?”

「…はい」

“そろそろかも”

「…そうですか」

“ゴメンね”

消えゆく幽霊との最後の会話は筆談。

バックに流れる曲(レクイエム)の美しさと相まって涙腺突きまくりの名シーンです。

黄昏乙女×アムネジア[北米版BD-BOX]」(2012年4月-6月放送/大沼心監督)


創立60年を数える私立誠教学園。長い歴史の中で増改築を繰り返した校舎は完璧な迷路。

中には物置と化して全く使われていない教室もあり、当然の帰結として学校の怪談が多数誕生。

中でも群を抜いて有名なのが、旧校舎の幽霊“夕子さん”

中等部1年の新谷貞一は旧校舎で迷子に。偶然入った大鏡のある部屋でセーラー服姿の美少女と出会います。

彼女こそ、旧校舎の幽霊、夕子さんでした。

夕子さんは自分がいつ、何故死んだのか記憶がありません。大鏡の裏から地下に通じる階段の下に転がる自分の死体を発見しても何も思い出せず。

天真爛漫な夕子さんに好意を抱く貞一。しかし、学園内にはもう一人、邪悪な気を撒き散らす黒い影が。

それは、夕子さんの負の感情。忌まわしい過去の記憶ごと切り離されたもうひとりの夕子さん(影夕子)。

夕子さんは自身の過去を調べる為、「怪異調査部」を設立(文字通り幽霊部長)して行動を開始(いや、行動するのは貞一くんなんだけどね)。

貞一と夕子のバカップルぶりを愉しむイチャコラパート、影夕子が出現するホラー・パート、夕子の過去が明らかになるシリアス・パート、そして生身の人間と幽霊が心通わす純愛パート。

ざっくりこの4つの部位から成り立っているのですが、各々のバランスが絶妙。

笑ってビビって涙して。監督に鼻面引き回される快感(本作にバカテスにわたモテ、この監督、振れ幅デカいな…)。

特に夕子が疫病の人柱にされるシーンの怖さったら。

現代パートでも、簡単な暗示と誘導で生徒がたやすく暴徒化し、祟りを回避するために生贄を捧げるという狂った行動に走る様を描いており、人柱の話がそんな時代だったという昔話になっていない所が二重に怖いです。

貞一に対する恋愛感情と同時に自身の負の感情をも意識し情緒不安定になった夕子は、貞一を階段から突き落とし、貞一と出会ってからの一切の記憶を切り離して(影夕子に押し付けて)しまいますが…。

夕子さんの特筆すべき特徴は貞一君限定で“触る事ができる”事(夕子さんの血縁にあたる霧江さんも触れられますが、ほとんど触る機会がないので無視)。

何故そんな設定になっているのか? “萌え”パートに厚みを持たせる為に決まっているじゃないですか(笑)。

北米版BD-BOXは、通常のBDケースにBD2枚(全12話+未放送第13話+第12話Extended Ver. 全話日本語コメンタリー付)+サントラCD2枚の計4枚を詰め込んで5,000円強。

国内版単巻BD(BOXは無い)を定価で揃えると45,150円。やはりお買い得です。

★ご参考~大沼心監督と言えば…