試合は惨敗だが勝負には…。 ダーク・ディーラー
たとえ話が進むに従って雪崩式グダグダになるオムニバス・ホラーでも、中にキラリと光るエピソードがひとつあれば、それは良作なのだと思います。
「ダーク・ディーラー」(1995年/トム・アレキサンダー監督)
ディーラーはカジノにいるあのディーラーです。
死者が現世に引き返せるかもしれない最後のチャンス、それは死神ディーラーとのカードゲーム。ベットするのは勿論、魂。
テーブルについたプレーヤー3人の死んだ経緯がフラッシュ・バック。
まずは仲間と二人で借金返済滞納者をストリートで〆めていた(凶器シューズで滅多蹴り。当然相手は死亡)街のチンピラのお話。
殺害現場前のビルには地面すれすれの所に小窓が。海外ではよくある半地下(というかほとんど地下)の一室。暮らしているのはひとりの老人(写真1枚目)。
二人組みはこの老人が犯行を目撃していたのではないかと疑い(実際目撃している)、この老人宅を急襲するのですが…。
ちょいと相手が悪かった系ホラーで、哀れチンピラは老人の食卓の友に…。
この1話目が非常に良く出来ています。臆病そうなくせに脅されて言った事が全部嘘という老人のキャラ、異形のものに変身する丁寧な特撮。これは拾い物かも、という期待を持たせるに十分な出来栄えです。
2話目は飲んだくれて死んだブルーズ・ギタリストのデモテープをガレージセールで見つけた弁護士が、その曲をガメたために呪われるお話。
悪くはないのですが長すぎ。始まって3分で展開もオチも読めてしまいます。
最後の話はメインのくせに一番グダグダ。
ヤク売りさばいているチンピラと一緒に製薬会社に忍び込んだ青年とヤク中の彼女。
チンピラさんはこの製薬会社の(リストラされた)元社員なので内部構造は熟知。目的はハイになれるお薬の確保。
失敬ついでに見つけた薬ボリボリ齧ったら、まだ実験中の試薬だったからさあ大変。
一瞬で人体崩壊したと思ったら、光の玉に大変身。彼女呑み込み電撃撒き散らしながら社内を移動…ってちょっと待て。一体何の薬だったんだ。
SF映画の兵器並のドラッグやないかい。そんなものキャビネの中に無造作に置いておくなよ。
んでさんざっぱら、大暴れ(警備員とか胴体真っ二つ)しておきながら、水かけただけで爆発・消失。えええ?
「うわあ、もう好きにしてぇ」なグダグダエンディング。期待して観続けた事を激しく後悔する出来栄えですが、1話目だけはもう1回観ようかなって気にはなりました。
試合は惨敗だが、勝負には勝った、そんな感じでございますです、はい。