デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

その涎は絆。 謎の彼女X[北米版BD-BOX]

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「舐めたでしょ。机にこぼれていた私の涎を。甘かった? 椿くん、ひょっとしてあの時私の事を好きになったんじゃない? あなたの熱は風邪なんかじゃない。ただの恋の病よ」

先日の「えむえむっ!」からの流れで“変態シリーズ”にしようと思ったのですが、間違っておりました。

思春期の男の子にとって、女の子が女の子であるというだけで、どれだけ謎めいているのか、これは自分とは異なる生き物に出会った“第三種接近遭遇”の寓話です。

「謎の彼女X[北米版BD-BOX]」(2012年4月-6月/渡辺歩監督)

北米版のタイトルは「Mysterious Girlfriend X」。

勿論、原題の直訳ですが、“謎の”に加えて“神秘的な”というニュアンスを強く感じます。

都立風見台高校2年A組に転校してきた謎の少女、卜部美琴。

ぼさぼさの髪。前髪に隠れて見えない目。昼休みは食事も採らず机に突っ伏して熟睡。友人を拒絶し、授業中に突如けたたましく笑い出す。

普通に考えて“ドン引き”です。

ある日の放課後、同じクラスの椿明が日直の仕事から戻ると誰もいない教室で卜部が爆睡。

起き抜けの寝ぼけ顔。初めて見る卜部の眼。その口元からは一筋の涎が…。

「卜部…涎」

卜部が帰った後、彼女の机に溜まった涎を指先ですくって舐める椿。

「…甘い」

その後、椿は謎の高熱でダウン。それは卜部の涎を求める恋の禁断症状でした。

見舞いに訪れた卜部の涎を舐めた途端、椿の体は元通りに。

以来、学校の帰り道、別れ際に卜部の涎を摂取することが椿の日課になりました。

彼女の涎は彼女と繋がる者に感情を伝播させる事ができます。

例えば、1日ノーパンで過ごした卜部の涎を舐めると鼻血が。

椿が中学時代に片思いしていた女と一緒にいるのを見た後の卜部の涎を舐めたときは大粒の涙が。

逆に椿の涎を卜部が舐めることで彼の感情を知ることも(椿自身が覚えていない母を亡くした時の悲しみとか)。

言葉を媒介しない“想い”の交流。

最初の一歩が“涎の交換”というおよそ普通のカップルはしないであろう行為でありながら、手を繋ぐ・抱きしめる・キスをする、という普通の行為のハードルが高い高い。

うっかり情動的に卜部を抱きしめようとすると必殺パンツハサミが待っています(卜部はパンツに鋭利なハサミを挟んでおり、このハサミが挟める厚さならあらゆるものを瞬時にシュレッドすることができます)。

どうやら彼女には決して曲げる事の出来ない行動のルールがあるようです。

予測不能な謎の彼女に翻弄され続ける椿。繋ぐ絆は涎。

これはもう純愛ファンタジーと呼んで良いのでは(実際、こんな彼女がいたら絶対嘘がつけないから困るのですが…)。