デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

それでもやっぱりペキンパー。 キラー・エリート[1975]

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『お前は狂犬なんかじゃない。鬱病の詩人さ』

恐らくペキンパー作品の中では「バイオレント・サタデー」と並んで評価の低い作品なのではないかと思いますが、それでもやっぱりペキンパーなのです。

確かにスローモーションもカットバックも前年の「ガルシアの首」、同年の「戦争のはらわた」に比べたらキレがありません。

しかし、画面には艶が溢れています。

ジェームズ・カーンロバート・デュバルバート・ヤングにボー・ホプキンス。ダーティ・ビジネスの中でしか生きていけない男達。

 


CIAの汚れ仕事を請け負う民間組織コムテック。

マイク(カーン)は腕利きのエージェントでしたが、相棒のジョージ(デュバル)の裏切りに遭い護送中の要人を殺された挙句、自身も瀕死の重傷を。

会社からは引退勧告(リストラだ!)を受けましたが、気合と根性と東洋武術で克服。

復帰戦は台湾の政治家ユエン・チャン(マコ岩松)のアメリカ国外への亡命幇助。

チャン暗殺を目論むニンジャ軍団。その背後にはジョージの姿が。

やんちゃ過ぎて仕事を回してもらえない狂犬ミラー(ホプキンス最高!)と、引退したメカニックのマック(ヤング)を引き込んでチームを結成したマイクは、チャンの護衛とジョージへの復讐という両面作戦を展開。

この敵味方双方の顔を眺めているだけで僥倖な時間が流れていきます。

決してテンポが良いとは言えませんが、何故か恍惚感を覚える不思議なリズム。

そう、これも間違いなくペキンパーの映画。

マイクに空手の稽古をつけている師範が、「腰を捻ることによって確実に肘を相手のこめかみにヒットさせる事ができる」と説いていましたが、こういう“理”を持ち込む辺り、ペキンパーが見せかけじゃないアクションを志向しているのが分かってちょっと嬉しかったです。