離れ小島の工事現場で無人のブルドーザーが大暴れ。
原因は隕石に付着した“何か”というスティーブン・キングも土下座しそうな超アバウト設定。
登場人物は汗臭いガテン系オヤジ数人のみ(しかし、その中にネヴィル・ブランドがいたりするので侮れない)。
地味にも程がある(そして愛してやまない)低予算TVM。それが、
「殺人ブルドーザー」
(1974年/ジェリー・ロンドン監督)
原題「KILLDOZER」。男の初期衝動にズシンと響く偏差値貧乏タイトルです。
本作のデータを確認しようとしたら、「KILLDOZER事件」なるものが引っかかってきました。
調べてみたら、これが凄い大事件! 映画の100倍は面白いリアル西部警察。
「殺人ブルドーザー」を熱く語るつもりだったのですが、軌道修正・タイトル変更。
「キルドーザー事件」
(2004年6月4日/アメリカ・コロラド州グランビー)
事件のあらましはWikiに詳しいですが、改めて事の経緯を追ってみましょう。
事件発生から遡る事4年。
マービン・ヒーメイヤーが営む自動車修理業の隣にコンクリート工場が建つことに。
『おいおい、んなもん建てられたら俺っちの溶接工場の看板が幹線道路から見えなくなっちまうでねえか』
マービンは景観保護も絡めて市役所を訴えましたが敗訴。尚も反対運動を続けるマービンに行政が人でなし反撃…。
新聞社を使って反対運動を非難、反対派の結束を乱して切り崩しにかかります。
マービンを支援していた市民が離れたところで、工場を抜き打ち検査。設備の不備を理由に罰金と業務改善命令を出しましたが、マービンがこれに従わなかったために営業停止処分に。
たった一人の肉親である父が死に、婚約者も去り、工場も売却…全てを失ったマービンは大いなる決意をします。
マービンはまず小松製作所製D355Aブルドーザーを購入。
鉄板とコンクリートを使ってこれを改造。溶接工ですからね。お手の物です。約2ヶ月の時を経て動く要塞キルドーザーが完成しました。
運命の6月4日、マービンは事の発端であるコンクリート工場全壊を皮切りに、市役所全壊、自分を民衆の敵に祭り上げやがった新聞社全壊、更に市長の自宅を粉砕するというお礼参りを敢行。
この間、警察も黙って見ていた訳ではなく、SWATを投入して銃火器による殲滅戦を試みましたが、チューンナップされた小松製品に隙無し敵無し死角無し。
Youtubeのニュース映像(写真下2枚)を見ましたが、正に西部警察・無防備都市。
最終的にはラジエーターの故障でキルドーザーは停止。マービンは車内で拳銃自殺を遂げました。
驚いたことにこれだけの惨事を引き起こしておきながら、死傷者ゼロ。マービンは地元では皆に愛される善き隣人だったそうです。
行政とメディアの悪辣ぶりを思うと胸がすく反面、やりきれない気持ちにもなります。
ギルドーザー事件の名前の由来は勿論、「殺人ブルドーザー」の原作小説「KILLDOZER」(セオドア・スタージョン著)から。何故、この実話を映画化しないんだろう…。