国会議事堂、東京タワー、銀座の街並みを次々と冬の利根川に投げ込めば、水没都市・東京の出来上がり。
『尺は合ってないし、木製だから浮くし、寒いし』
ご苦労、お察し申し上げます。
「中野昭慶、妖星ゴラスを語る」(DVD映像特典)
特撮スタッフとして現場に参加していた若き中野昭慶の述懐です。
『地球儀だけで大中小、それぞれにまた大中小があったから全部で8つか9つ作りましたね。石膏で出来てますから、虫がつかない、腐らない。今だに東宝の若い人が使っているみたいですよ』
東宝の 歴史支える ミニチュア地球。重いだろ、若人。
『バックの星が一番困る。ホリゾントだったりガラスを貼ったり電球入れたりしているんですが、これを宇宙船の動きに合わせてどう動かせばいいのかが分からない』
要するに宇宙空間の遠景と近景をどう区別すれば良いのか分からないという事ですが、たしかに分かりませんよね。距離感がまるで掴めないんだから。
やはり最大の見せ場は南極基地。
気合入れまくった美術班が500坪目一杯使って特大基地建設。
『カメラの置き場もありません(笑)』
面白いのは円谷英二の撮影手法。
『細かいディテールを延々積み重ねていって、最後に大ロングをどーんと出す』
改めてこのミニチユアシーンを観ましたが本当に素晴らしい。ぶっちゃけ工事現場の作業風景を写しているだけなのに、何と言うスペクタクル(この辺に関しては下手にBDとかにしない方が良いような気がします)。
地軸にそって地球を移動させるロケット噴射は200本のガスボンベ。室内撮影は到底無理なので屋外セット。
スナップ写真が紹介されていましたが、マグマ(怪獣)の中に入っていた人は蒸し焼きになって死んでいると思います。
煙の出ない火、という事でガスを選んだそうですが、プロパンだったためにガス圧が低くて火に勢いが無く、熱さの割には報われない撮影だったようです。
こんな苦労を踏まえつつ、「妖星ゴラス」を観直すのも一興かと。