神を冒涜したとして、あっちこっちで上映禁止を喰らった問題作。
犯罪パニックで幕を開け、オカルト・ホラー…と思わせてトンデモSFに着地。
この人、やっぱり鬼(奇)才です。
「ディーモン/悪魔の受精卵」
(1976年/ラリー・コーエン監督)
ビルの屋上の給水塔に登って通りの人々を無差別に狙うライフル殺人鬼(テキサス・タワーだ!)。
きちんと群集を動かしたモブシーンで掴みはOK。
聖パトリックのパレードの最中に突如ピストルを乱射し始める警察官(完全ゲリラ撮り!)。
温厚な青年が、実直な警察官が豹変。動機を尋ねると口を揃えて、
『神のお告げだ(God Told Me To←原題)』
教会に拾われた孤児という出自を持つ刑事ピーター(トニー・アン・ビアンコ)が調査を開始。
やがて、彼らを操っていたと思われる“処女懐妊によって生まれた謎の男”と彼を崇める集団の存在に突き当たり…。
神とは何か? という問いにラリー・コーエンが出したひとつの答えがここに(そりゃ上映禁止になるわな)。
中盤、やや勢いが殺がれるものの、ピーターの出生の秘密が明かされる終盤は「大丈夫か、おい」な展開。
ちょっと山田正紀の「弥勒戦争」、黒沢清の「CURE」あたりを思い起こさせます。
本編クレジットの終わりには「バーナード・ハーマンに捧ぐ」というテロップが。
はて、音楽はハーマンじゃなくてフランコ・コーデルだろ?と思ったら、最初の発注予定がハーマンだったのですが、ハーマンは音楽無しの完成フィルムを観た直後(と言うかその日の夜)に死亡してしまったんだそうです。
全く以って洒落になりません。
因みにコーエンがコーデルのスコアについてミクロス・ローザに尋ねた時のローザの答えは、"God told me not to."
特別ゲストでデボラ・ラフィンが(この人、「センチネル」とか「スーパーマグナム」とか「スキャナーズ2」とか時々ピンポイントでこちら側の作品に顔出しますね)。
1977年アボリアッツ・ファンタスティック映画祭審査員特別賞受賞。
※ラリー・コーエン監督の怪作「空の大怪獣Q」がスティングレイからBlu-ray(!)で発売されるようです。こちらも楽しみ(ここもピンポイントで作品選ぶなぁ)。
※参考:「5歳で子作りとは絶倫な。悪魔の赤ちゃん3/禁断の島」
→2008年11月22日
「オールスター闇鍋大宴会、遂に解禁。 センチネル」
→2010年4月2日
「世紀末救世主伝説。 スーパーマグナム」
→2011年4月28日
「その謎の習字幕は何だ? スキャナーズ2」
→2012年6月11日