確かに原作通りではあります。台詞はもちろん構図も動きも愚直に踏襲。
エロのシーンも原作にある通りなのですが、何故でしょう、妙に安く暗く貧しく前衛かつ淫靡な趣が全編に。
全ては石井フィルターの成せる技。
「ねじ式」(1998年/石井輝男監督)
冒頭の「あれ、続・恐怖奇形人間ですか?」な暗黒舞踏に(多分かなりの人が)潮干狩りが出きるくらい引きます。
どうもこの人にかかると、つげも乱歩も同じ盛り付けになってしまうようです。
お話は「別離」を皮切りに「もっきり屋の少女」「やなぎ屋主人」「ねじ式」を無理矢理且つ強引に繋げたオムニバスもどき。
無理に全エピの語り部を売れない貸し本漫画家ツベ(浅野忠信)にせず、独立した短編を漫画家ツベの筆致が紡いでいく、という構成にした方が良かったような。
浅野忠信は、つげ役にしてはいい男過ぎますが、自堕落で自虐的なダメ男を飄々と演じています。
とは言え、キャラ作りは「茶の味」と大して変わらず、嗚呼この人はどこで何を演っても浅野忠信なんだなあ、と妙な感心を(その意味で石井監督と同じ箱に入りますね)。
スーパー16mmを35mmにブローアップした映像はそれだけでも安さ爆発ですが、使用意図不明なカラーフィルターの多用が激安の誉れを上塗り。
模型らしさを全面に押し出した機関車シーンはレトロ感満点で良かったですが、到着時の道幅が広すぎ。
ここは、どう考えても物理的に入ってこれるわけがない空間に機関車が当たり前のように侵入してくる非日常感が欲しい所なので、これでは興醒め(逆にこのカットがちゃんと撮れていたら、それだけで評価2割増)。
各エピでは、つぐみがコバヤシチヨジを演じた「もっきり屋の少女」がいい感じにエロくてお薦めです(杉作J太郎超役得!)。