『海田さん、あんた、歳なんぼなん?』
『31だが』
『ほいじゃニッポンが戦争に負けた時は小学生じゃったのう。あん頃はのう、上は天皇陛下から下は赤ん坊まで、横流しの闇米喰ろうて生きとったんで。あんたもその米で育ったんじゃろうが。おう? 綺麗面して法の番人じゃ何じゃ言うんじゃったら、18年前われが犯した罪清算してから美味い飯喰うてみいや!』
エリート上司の喰らうカレー皿を壁まで弾き飛ばす叩き上げの部下。
『わしゃこの目で極道見とるんで。上だけ見とるようなおどれに何が分かるんじゃ!』
刑事の出した茶漬けの椀を丁寧に洗う殺人犯。
『わしはあの時から、広谷賢次の旗を掲げもったんで。旗もよう掲げん男が人を裁けるかや! わしゃこの旗は一生降ろさんぞ。のお! 男になれや、はよう。大原の二代目継いで男になれや!』
その旗を掲げた手が最後に握ったものは…。
『わしはのう、おどれの旗なんかであるかい! わしはわしの旗振っとるんど!』
敵対組織と地方警察の癒着を分断するための県警介入。その口実作りの大立ち回り。
『戦争や、いてこましたれ』
ひょっとしてこの頃の日本映画界って有り余るエネルギーの捨て所に困っていたのではあるまいか?
あるいはカチコミし続けないと死んでしまう熱病に罹っていたのではあるまいか。
そう思えるくらい血気ダダ漏れ、熱気底無し、アドレナリン天井知らず。
その勢いを全力で阻む県警の正義。
『あんたも向こう先の見えん男じゃのう。上に吐いた唾、下に落ちんと思うちょるんか』
そして全ての歯車が狂っていく…。
2008年に一度取り上げていますが、名台詞の数々を是非再録しておきたいと思いまして。