
不健全な精神を健全な肉体(死体だけど)に宿す。
目的は命の創生、最強の人類の誕生。イカレたドクターの考える事はいつの時代も変わりません。
「獣人 ゴリラ男」(1956年/フェルナンド・メンデス監督)
死体を獣の逞しい脳を使って最強の人類として蘇生させるという一粒で二度美味しい実験は今日も失敗。
死体盗まれっ放しで面目丸つぶれの警察は人気レスラー、ヴァンパイアを使って囮捜査を仕掛けますが、ヴァンパイアは試合中に殺され、遺体も強奪されるというていたらく。
ゴリラと合体したヴァンパイアは見事蘇生、スーパーパワーレスラーとして復活しましたが…。

と長々と書いた後でなんですが、本作の見せ場は理屈の分からない実験でもちゃちいメイクでもありません。
50年代のルチャリブレ、これですよ。
きっちり会場に人が入っていますし、ちゃんと興行として成立している試合で撮影しているのでしょう(不必要にカメラが寄ったりもしませんし)。
猪木-ゴッチ戦を思わせるダブル・ブリッヂ、場外に投げ飛ばされて気絶するレフェリー、それは新日本の原風景。
妙に丁寧な日本語を話す謎の柔道家の存在も見落とせません。
ゴリラ男の造形(メイク)はぶっちゃけコントレベル。しかし、それ以外は驚くほどしっかりした作り。
実際には押せば倒れるセットなのだと思いますが、照明とスモークで、やたら雰囲気のある絵作りになっています。
※参考:メキシコでゴリラと言えば…