先日、「北陸代理戦争」で北陸やくざの苛烈さを御紹介しましたが、今回は南国・沖縄。
内地とはひと味もふた味も違う沖縄やくざの弾けっぷりをご堪能ください。
「実録・沖縄やくざ戦争 いくさ世(ゆ)30年/抗争勃発編」(2007年/OZAWA監督)
「沖縄やくざ戦争」と言えば、中島貞夫監督の1976年作が有名ですが、沖縄返還後の本土やくざ沖縄侵攻と沖縄やくざの内部抗争に的を絞った中島作に比べこちらは30年に渡る大河ドラマ。
大戦後の発祥・発展の経緯、本土やくざと沖縄やくざの違いが良く分かる歴史教科書です。例えば、
- 呼称は“組”ではなく“派”(那覇派、コザ派など)。
- 系譜立った組織ではないため、親筋、兄筋というものが存在しない(つまり、間に入る人間がおらず、手打ちというものが存在しない)。
- 親分・子分の上下意識が希薄なため、容易に裏切り・分裂が起きる。
結果、ひとたび砲火を交えたら、いずれか一方が死に絶えるまで終わらない無間地獄に突入。
初期の頃は、抗争の経済学を知る人間がいなかったため、徒に疲弊を積み重ねる、といった試行錯誤も丹念に描写しています。
また、要所要所で「その頃、本土では…」という具合に山口組の勃興等に関する記述が入り、沖縄に限定されない戦後日本やくざ史の様相すら(渋すぎるナレーションは銀河万丈)。
出演は、小沢仁志・和義、中野英雄、寺島進、遠藤憲一…。
スタッフで気になるのは「監修:山本集」のクレジット。
板前、高校野球の監督を経て、関西のヤクザ組織“諏訪一家系淡路会”に入会(1967年)、武闘派としてブイブイ言わせた後、30歳の時に山本組を旗揚げして組長を襲名(1970年)。
1989年に山本組を解散、以後は富士山などを題材とした絵描きに。2011年12月16日に膀胱癌で死去。享年71歳。
波乱万丈の人生を駆け抜けたホンモノの極道です。安藤さんや山本さんは叛逆の歴史を今に伝える貴重な生き証人。彼の監修が、作品に実録の誉れを上塗りしています。
ただ、惜しむらくは画質。ビデオ特有の奥行も陰影も無い画面が残念無念(大戦中の資料映像の方が高画質って…)。
予算的に無理だとは思いますが、フィルム撮りであったなら(もしくはポストプロでフィルム風の加工が施されていたなら)…。
抗争勃発編は76分。以下、「抗争激化編」「抗争終結編」と続きます。こちらのレビューはいずれまた。