
戦後広島のやくざ抗争、と聞いて「仁義なき戦い」を思い出さない人はいないと思いますが、本作は紛れも無く「仁義なき戦い」の視点替えリメイク。
何という無茶、あいやチャレンジャブルな企画。
大下英治のドキュメンタリー小説を原作としていますが、元になっている話は(飯干晃一による仁義なき戦いの原作と)同じなので、当然展開も被る所多々。
「広島やくざ戦争」(2000年/辻裕之監督)
「仁義なき戦い」の狂言回しは、美能幸三(劇中では広能昌三@菅原文太)でしたが、こちらの主役は後の三代目共政会会長・山田久(劇中では山岡久@小沢仁志)。
「仁義なき戦い・完結編」で北大路欣也が演じていた松村保のモデルですね。
なので時間軸はこちらの方が少し後ろにズレています。
まだ愚連隊だった山岡と仲間が『山上光治が死んだで。警察に追われとったろ? 逃げ切れんようになっての、隠れとった家の風呂場の中で…ズドン!じゃ』と話していますが、これは「広島死闘編」で北大路欣也(ややこしいな)が演じた山中正治のこと。
『山上さんはの、組に迷惑かけんように罪を全部ひとりで背負ってあの世に行ったんじゃ』
『なんぼ立派じゃ言われても、死んだらどうにもならんわい』
組の使い捨ての道具にはならん、生涯一匹狼じゃと誓う山岡でしたが…。
あがいても、あがいてもままならないのがこの世界。
小沢仁志の喋り方、口の尖らせかた、眉間の皺の寄せ方が菅原文太そっくり。
そして、その御大・菅原文太がゲスト出演(更に梅宮辰夫まで!)。
同じ実録ものですが、こちらは青春映画の色合いが濃い目。「仁義なき戦い」を「ゴッドファーザー」に例えるなら、本作は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」といった所。
まあ、実録ものとしての語り口の巧さは事実関係・人間関係の整理含めて深作&笠原に敵う訳ないので、この路線で正解だと思います。
中野英雄演じる山岡の幼馴染・山崎英博(打館組幹部。モデルは恐らく打越組幹部の山口英弘。更に恐らく「代理戦争」で室田日出男が演じた打本組幹部・早川英男と同一人物)が良いアクセント。
『ワシは広島獲りとうてこの世界入ったんで。神戸に下ったらの、広島は神戸のものになるんじゃい。広島は広島。おどれがワシに言った言葉ぞ。
…最後はワレと広島獲りあいたいの』
『そん時ゃ、おどれにくれたるよ…』
お話はまだまだ序盤、という所で幕。「続・広島やくざ戦争~流血!第三次抗争勃発!!」に続きます。