デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

肉食獣は歯が命。 ゴジラの逆襲

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1982726日に文芸地下で観て以来、実に32年ぶりの再見。

日陰暮らしを余儀なくされている感が強い作品ですが、見所一杯の佳作です。

ゴジラの逆襲
(1955年/小田基義監督)


社会派ズッシーン!ゴジラエンタメどっかーん!「キンゴジ」に挟まれた上にモノクロ。音楽も伊福部じゃない(佐藤勝先生すみません)。何より監督に馴染みがない

小田基義という人は1940年から1958年の間に54本(共同監督、応援監督含む)の作品を撮り上げたプログラム・ピクチャー量産監督。

本作の前年に「幽霊男」というミステリー(金田一耕助もの)と「透明人間」というSFを撮っていますが、その他はほとんど人情喜劇かスラップスティック・コメディー。

彼のフィルモグラフィーの中でも「ゴジラの逆襲」は異質なのです。結果、ゴジラシリーズの中でも本作は異彩を放つことになりました。

2作目の大きな特徴はアンギラス投入によるバーサス・フォーマットの採用。

後にバーサスは“怪獣プロレス”と揶揄される事になりますが、本作の闘い模様はプロレスのそれとは一線を画しています。

ゴジラにもアンギラスにもキャットファイトをする気は毛頭無く、互いに初手から喉笛狙うシューティングスタイル

ゴジラの顔がアップになった時に目を見張ったのは、歯並びの凄さ。明らかに前作より凶暴化しています。


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怪獣プロレスは、通常の動きをハイスピード撮影して再生時に重量感を持たせるというのがセオリーですが、本作は逆。

動きが速い速い。実は撮影助手の高野宏一が撮影速度の設定を間違えてコマ落としにしてしまったらしいのですが、怪我の功名で獣同士の闘いとしてはリアルなんじゃないか、という仕上がりになっています。

最期は逃げようとするアンギラスの首にゴジラが深々と牙を突き立てて戦いは幕。

クライマックスは千島列島の神子島。空爆による雪崩誘発でゴジラを氷の中に生き埋めにする作戦が展開します…が、ここの演出はちょっと…。

急降下爆撃をした後、ゴジラの白熱線を避けながら山の斜面に沿って急上昇する、という難易度の高い操縦に航空自衛隊パイロットたち(主人公・小泉博の旧友。元日本海軍飛行機隊)が次々命を落としていくのですが、操縦席を映さないので誰がいつ死んだのかさっぱり。

ここは特攻の生き残りが死に場所求めて、くらいの悲壮感を出してくれた方が盛り上がったと思うのですが、作り手は小泉の同僚パイロット、千秋実の叶わぬ恋心の方に関心が向いていたようです。


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今回はHD化されたものを鑑賞。暗くて見え難かった大阪夜の陣(灯火管制中)もかなり観やすくなっていました。

ギャレス版ゴジラ(日に日に印象が薄れていく…)を観た後で本作を観ると色々と染みるものがありますね。


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