刑事ドラマに於いて、オートマチックがきちんとブローバックし、スライド・ストップし、サブマシンガンから薬莢が排出された最初の例なのではないかと思います。
それまでの刑事ドラマでは、オートマチック拳銃で引き金を引いたら撃鉄が空の薬室を叩いて弾切れ、マガジンを力任せに引き抜いて交換、そのまま(初弾をバレルに送らずに)発射といった二重三重に誤まった描写がまかり通っていましたから、歴史的快挙と言えるかもしれません。
これでハードボイルド・アクションに徹してくれたら言う事無しだったのですが…。
「ゴリラ 警視庁捜査第8班/第1話・ポリス・アドベンチャー」(1989年4月2日/小澤啓一監督)
84年10月に終了した西部警察の後継企画…なのですがコンセプトが大迷走。
「ランボー」シリーズの人気と当時流行り始めていたサバゲ、「あぶない刑事」の大ヒットなども取り込んだ結果、
傭兵によるサバイバル・アクションとお洒落なコメディという、どう考えても相容れない要素を抱き合わせた上に最期は大爆発で〆る前人未到のコンセプトを確立いたしました。
台湾で起きた日本人(大手ゼネコン重役夫妻)誘拐事件を契機に組織された“警察であって警察でない”特命部隊“警視庁捜査第8班”。
メンバーは、元警視庁捜査一課部長刑事・倉本省(渡哲也)を筆頭に、同じく元警視庁刑事の風間(神田正輝)と元刑事・伊達(舘ひろし)、そしてモデル系の顔立ち以外何ひとつ取り得の無い所轄刑事(一目で役者として芽が出ないと分かる石原プロの若手・谷川竜)。
初回2時間スペシャルは、日本、台湾、フィリピンを股にかけてマニラ市街戦、熱帯雨林掃討戦を展開。
フィリピン大統領府全面協力により、実銃と軍用ヘリコプターの供与を受けています。
派手な見せ場がある割には演出がもっさり。キリっと締まった感がありません。
当然、視聴率は振るわず。焦った局側は何をトチ狂ったか、倉本聰とその弟子達を引き入れて、新たに“人情”“夫婦愛”“不治の病”という要素を投入。
最早、何のドラマかさえ理解不能なカオスへと突入していくのでした(それでも1年間続いたんだから大したもんだ)。