シリーズ中、2番目に暗く、2番目に殺伐としていて、オープニングが1番クールな必殺シリーズ7作目。
「必殺仕業人/第1話・あんたこの世をどう思う」
(1976年1月16日放送/工藤栄一監督)
前作「必殺仕置屋稼業」最終話で市松(沖雅也)の逃亡を許したため、中村主水は牢屋見回りに降格・左遷。
当然、収入は激減。せんとりつは傘貼りの内職に追われる日々。
季節は冬。冷たい風に雨と雪。布きれ首に巻いて白い息吐く中村主水の背中に哀愁。
捨三(渡辺篤史)は前作から続投。ここにやいとや又右衛門(大出俊)、武士を捨て大道芸人に身をやつしている赤井剣之介(中村敦夫)とその妻(と言うか情婦)お歌(中尾ミエ)を加えた5名が本作レギュラー。
主水と剣之介が出逢うシーンがいい。
凍えそうな夜、一杯のどんぶりをすする剣之介とお歌。通りかかった主水に声をかける剣之介。
『お前さん、町方の役人かい? 中村主水って男を知らないか?』
殺気。間合い。居合。流れる挿入歌は「西陽の当たる部屋」(荒木一郎)。
♪ いつわりの愛というけれど 唄い そして 笑い
抱き寄せた俺たちの 身体に通うものは何か
遠い昔はもう帰らない
こういう“どん詰まりの青春ソング”を扱わせると工藤栄一は巧い。「その後の仁義なき戦い」「ヨコハマBJブルース」「逃れの町」…皆、思うに任せない青春映画でした。
お歌が大道芸で(第1話では殺しのシーンで)爪弾く和歌も風情があります。
♪人買舟は沖を漕ぐ とても売らるるこの身をば
ただ静かに漕げ 船頭衆…
EDは西崎みどり「さざなみ」。作曲はお馴染み平尾昌晃(必殺の68%くらいはこの人で構成されていると思います)。
OP、ED、挿入歌、BGM。音楽が一番充実していた作品だったかもしれません。
因みに私がシリーズ1暗いと思っている作品はこちら