何回観てもストーリーが頭に入って来ない不朽の名作。
「ブリット」(1968年/ピーター・イエーツ監督)
いや勿論、大筋は分かっていますよ。ただ細かい所が謎(矛盾)だらけで。
「ブリットってどんな映画?」と聞かれてきっちりストーリーを説明できる人って少ないんじゃないででしょうか。
で、結局、「いやあ、サンフランシスコの坂を使ったカーチェイスが凄くてさあ」という紋切り型の感想に。
実際、あのシーンは凄い。ここだけはラロ・シフリンも休憩タイム。
エンジン音とブレーキ音。次々弾け飛ぶホイール。カーブひとつで見せ場を作るアナログ・チェイスの醍醐味。
肝心のお話はどう見ても脚本が破綻していますが、これ多分全部マクガフィンなんだと思います。
ただひたすらマックィーンをかっちょ良く見せる(魅せる)ための大仕掛け。
証人ジョニー・ロスが誰であろうが、殺し屋が信じられないほど間抜けであろうが、上院議員(ロバート・ヴォーン)の思惑が何であろうが、それがマックィーンと敵対する存在であれば何でもいいのでしょう。
寝ぼけ眼でインスタント・コーヒーに電熱器を突っ込み、冷凍食品をドカ買いし、美女に仕事の非情さを非難され、といった生活感も全てがマックィーンの魅力を際立たせる小道具です。
ジャクリーン・ビセットの美貌すら…。
なので、ストーリーのアラを突くことは無意味。片目を閉じて「よく分かんねーけどマックィーン、かっけー!」が、本作の正しい見方なんだと思います。
さて、遡る事20年前。私はサンフランシスコにおりました(住んでた訳じゃないですよ。仕事です)。
夜、とある中華屋で打ち合わせを済ませてホテルへの帰り道。1台のタクシーに5人が乗り込むと言う“ギネスに挑戦”状態に。
後部座席に偉いさん3人。助手席に旅行会社のおっさんと私。当然、入りきらないので、私は窓を全開にして上半身を車外に出すという“シートベルトって何?”な疑似箱乗り体勢。
下り方向に坂道発進したタクシーは景気良く夜のシスコを駆け抜けて気分はブリット。
おお、俺は今、風になって…(ねえよ)。
あれから幾星霜。気がつけばマックィーンの年齢 を追い越してしまいました。まったくこの歳まで何をやってきたのやら…。