
「ようし、じゃ殴り込み行きましょうか! 照明部OK?」「OK!」
「録音部OK?」「OK!」
「撮影部OK?」「OK!」
「俳優もOK?」「うおおおお!」
「本番、ヨーイ!…スタート!!!」
“喜びの歌”がこれほど綺麗に嵌るシーンも珍しい…。正に歓喜。

“いつか必ず世に残る1本の映画を撮る! 映画の神が撮らせてくれる!”
そう信じて8mmカメラを回すボンクラ自主映画集団“ファック・ボンバーズ”。
場末の映画館の映写室(老映写技師はミッキー・カーチス!)を根城に夢を語って、語って、騙って。
いつしか10年近い歳月が…。
それでも監督平田は今日も夢を語り倒す。
その頃、武藤組組長・武藤大三(國村隼)はふたつの問題を抱えていました。
ひとつは池上純(堤真一)率いる敵対組織・池上組との抗争。
そしてもうひとつは何としてもあと10日以内に娘・ミツコ(二階堂ふみ)主演のアクション映画を完成させなければならないこと。
映画の神の黒いユーモアが、出会うはずの無い人を出合わせ、ドミノ倒し的連鎖反応を起こさせ、ファック・ボンバーズに35mmパナビジョン・カメラをもたらしました。

前半、勝手に話を紡ぐバラバラのピースが引き寄せられ、交わり、1本に繋がった時の破壊力…。

大量の血糊はかなりの割合でCG。いささか興ざめではあるのですが、補って余りあるのが前半の武藤組長宅のシーン。
少女(二階堂ふみの子供時代)が帰宅してリビングへ。カメラは天井近くからの俯瞰。床には真っ赤なカーペット…ではありません。血です。血のプールです。
武藤組長を殺しに来た刺客たちを武藤の妻しずえ(友近)が包丁1本で全員返り討ちにした後の惨状。
この血のプールをウォータースライダーのように滑る少女。

この美しさと馬鹿馬鹿しさが混然一体になったカットだけで血糊CGは無罪放免です(アルジェントが観たら絶賛するんじゃないかと思います)。
惜しむらくはもう少し、心にドラゴンが入っていれば…いや、これも坂口卓の俳優ラストムービーという事で良しとしましょう。
多分評価は0点か1万点の二択。都合の良い中間点はありません。
映画の神、ここに来ませり。