デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

映画の神のユーモアは黒い。 地獄でなぜ悪い

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「ようし、じゃ殴り込み行きましょうか! 照明部OK?」「OK!」
「録音部OK?」「OK!」
「撮影部OK?」「OK!」
「俳優もOK?」「うおおおお!
「本番、ヨーイ!…スタート!!!
 
喜びの歌”がこれほど綺麗に嵌るシーンも珍しい…。正に歓喜


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巧いとか下手とかの問題ではありません。こういうアナーキーな映画をまだ日本は撮る事が出来る(あまつさえ商売にする事が出来る)、という事実に喝采を送りましょう。
 
これは園子温による蒲田行進曲「ニューシネマ・パラダイス」。そして何より「セシル・B・シネマ・ウォーズ」
 
地獄でなぜ悪い2013年/園子温監督)
 
“いつか必ず世に残る1本の映画を撮る! 映画の神が撮らせてくれる!”
 
そう信じて8mmカメラを回すボンクラ自主映画集団“ファック・ボンバーズ”。
 
場末の映画館の映写室(老映写技師はミッキー・カーチス)を根城に夢を語って、語って、騙って。
 
いつしか10近い歳月が…。
 
映画館は廃墟と化し、日本のブルース・リーになるはずだった男は30目前。出来た作品はパイロットフィルム1本(しかもビデオ)だけ。


それでも監督平田は今日も夢を語り倒す
 
その頃、武藤組組長・武藤大三(國村隼)はふたつの問題を抱えていました。
 
ひとつは池上純(堤真一)率いる敵対組織・池上組との抗争。
 
そしてもうひとつは何としてもあと10日以内に娘・ミツコ(二階堂ふみ)主演のアクション映画を完成させなければならないこと。
 
映画の神の黒いユーモアが、出会うはずの無い人を出合わせ、ドミノ倒し的連鎖反応を起こさせ、ファック・ボンバーズに35mmパナビジョン・カメラをもたらしました。


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前半、勝手に話を紡ぐバラバラのピースが引き寄せられ、交わり、1本に繋がった時の破壊力…。
 
キルビル」の青葉屋シーンが成層圏の彼方。


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大量の血糊はかなりの割合でCG。いささか興ざめではあるのですが、補って余りあるのが前半の武藤組長宅のシーン。
 
少女(二階堂ふみの子供時代)が帰宅してリビングへ。カメラは天井近くからの俯瞰。床には真っ赤なカーペット…ではありません。です。血のプールです。
 
武藤組長を殺しに来た刺客たちを武藤の妻しずえ(友近)が包丁1本で全員返り討ちにした後の惨状。
 
この血のプールをウォータースライダーのように滑る少女。


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この美しさと馬鹿馬鹿しさが混然一体になったカットだけで血糊CGは無罪放免です(アルジェントが観たら絶賛するんじゃないかと思います)。
 
惜しむらくはもう少し、心にドラゴンが入っていれば…いや、これも坂口卓の俳優ラストムービーという事で良しとしましょう。
 
多分評価は0点か1万点の二択。都合の良い中間点はありません。
 
映画の神、ここに来ませり。

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