『ヒトラーの好きだった映画も知らないくせに! 『凶弾』はいつどこで封切られたと思う? ケネディ暗殺の日のテキサス劇場だ! そんな事もお前らは知らないんだろう!』
物凄い捨て台詞です(笑)。
因みにここで言っている『凶弾』というのは(台詞から察するに)「WAR IS HELL」の事で1961年のアメリカ映画。日本での英題は「WAR HERO」、邦題は「第八高地突撃隊」で公開日は61年9月26日。
あれ? ケネディが暗殺されたのは1963年では? と思ったらアメリカでの公開は1963年。でも月日が10月23日で暗殺日(11月22日)と微妙に違う…。
テキサスでの封切りは11月22日だったのでしょうか。
いや、それ以前に何故、岡枝慎二氏はこれを『凶弾』と訳したのか?
なんて事を気にしてしまうのもオタクの性(サガ)なのかもしれません。
これは早すぎたオタクの暗黒青春挽歌。
「フェイドTOブラック」
(1980年/ヴァーノン・ジンマーマン監督)
フィルム保管庫で働くエリック(デニス・クリストファー)は映画オタク。頭の中は映画の知識で一杯(と言うかそれ以外のものが入る隙間がない)。
勿論部屋は映画グッズで満員御礼。
1980年と言えば、家庭用ビデオデッキが発売されはじめた頃。まだ一般人が手を出すにはちぃっと高価な代物でした。
ソフトはセルもレンタルも産声以前。映画との出会いは名画座、テレビの一期一会。手元に置くには16mmフィルムを購入しなければなりませんでした。
日本での公開は84年(この時間差4年は大きい)。私は前年11月に試写会で観ましたが、映画館でバイトし、テレビ番組をチェックしながらビデオテープ(超高級品)のやりくりをする日常はエリックと丸被り。
ああ、こいつは俺だ。愛すべきクソ野郎だ。
精神のタガが外れ、映画のシーンを模しながら自分をいじめた奴らに天誅を喰らわすエリックは世間的には異常者ですが、どうしても他人とは思えず…。
エリックをいじめる職場の同僚にミッキー・ローク(顔面崩壊前ですこぶる美形)。
彼を襲う時のエリックのカウボーイ・コスプレがホパロング・キャシディ。
これを見たミッキー・ロークが「ウィリアム・ボイド(ホパロングを演じた役者)だ」と即座に言い当てます。
ひょっとしたら友達になれたかもしれないのに…。
エリックもあと15年遅く生まれていればタランティーノに、25年遅く生まれていればネット社会の申し子として時代の寵児になれたかもしれないのに。
結局エリックは大好きな「白熱」のジェームズ・キャグニーを模倣して…。
生まれる時代を選べないのは辛いですね。