ジェイソン・ステイサム。元特殊部隊。少女。復讐。こんなキーワードから多くの人が“カーアクションてんこ盛り、ガンアクション乱れ撃ち”な内容を連想するでしょうが、残念。
本作はハードボイルドを装った贖いの物語。
強いて近しい匂いの作品を挙げるなら、ミッキー・ロークの「死にゆく者への祈り」。
「ハミングバード」
(2013年/スティーヴン・ナイト監督)
アフガニスタンで仲間5人をゲリラに殺され、報復のため非戦闘員5人を殺戮した特殊部隊兵士ジョゼフ・スミス(ジェイソン・ステイサム)。
彼の“犯行”の全ては無人偵察機ハミングバードに記録されていました。
イギリスに送還されたジョゼフは軍法会議を前に収容されていた病院を脱走。下町のホームレスとして底辺を這う生活を。
ここで互いの温もりで命を支えあった少女イザベルがギャングの手に。
偶然、他人に成りすます事に成功したジョゼフは、チャイニーズ・マフィアの汚れ仕事をこなしながらシスター・クリスティーナの協力の下、イザベルの行方を追い求めますが…。
最初の見所はステイサムのロン毛。基本ハゲのざんばらロングなのでほぼ落ち武者。
おおお、似合わねえ(ある種の凄味はありますが)と思っていたら、すぐに剃りあげていつもの顔に(多分観た人全員がほっと胸をなでおろしたと思います)。
チャイニーズ・マフィアの裏ビジネス、怖いです。特に人身売買コンテナ。
監督はこれがデビュー作ですが、脚本家として「イースタン・プロミス」を手掛けています。
やがてイザベルの最期を知ったステイサムはある決心を。
本作には「ハミングバード」の他に「REDEMPTION」というタイトルがつけられています。直球で“贖罪”。
ステイサムに協力するシスター・クリスティーナ(アガタ・ブゼク)にも記憶の襞に押し込めた過去がありました。
外罰的な男と内罰的な女。互いに忘れていた笑顔。別れ。
いつものステイサム映画と違う(ドカン!バキュン!が無い)という理由で本作を低く評価するレビューを多く見かけましたが、私は(初期のガイ・リッチー作品を除けば)初めてステイサム映画を面白いと思いました。
この人、どこで何演ってもステイサム(←キムタクと同じ箱)なので、たまにこういう屈折した役に挑戦しないとセガール街道まっしぐら(真っ逆さま?)になってしまいます。
無駄にスタイリッシュに撮りたがる人が多い中、浮つかない画角と色調(と編集)にも好感が持てました。
★ご参考