
リー・ハーヴェイ・オズワルドの葬儀。どの教会からも断られ、墓地内のチャペルも使えず。
車から棺を降ろしてくれる人手もない。あるのは好奇と憎悪の視線だけ。

シャッターを切る報道に向かって歩いて行く人影。リーの兄、ロバート・オズワルド。
「手を…貸してくれませんか…」
カメラを置き、帽子を脱ぎ、オズワルドの棺を降ろすカメラマン。ひとり黙々と土をかけるロバートにひとりまたひとりと手を貸し始める墓地従業員。
作り手の真摯な姿勢が垣間見える名シーンだと思います。
「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」
(2013年/ピーター・ランデズマン監督)
ケネディ大統領暗殺に係ってしまった市井の人々。陰謀も新事実も無し。「ダラスの熱い日」の真逆に位置する実録群像劇です。

僅か数日の間に大統領とその暗殺犯と目される男の死に立ち会ったパークランド病院のチャールズ・ジム・カリコ医師、偶然、暗殺の全貌をフィルムに納めてしまったエイブラハム・ザブルーダー、そして大統領暗殺犯の兄となったロバート・オズワルド。
「息子は政府のエージェントで身代わりになったの。私はこの事を本にするわ」
リーの母マーガレット・オズワルドが電波バリバリでエキセントリック。

ちょっと気になったのが、ザブルーダーが撮影したフィルムの現像について。
一刻も早く内容を確認したいシークレット・サービスはカメラを新聞社に持ち込みますが、
「8mmか! こいつはうちじゃ現像できない」
それでは、とコダックの支所まで持って行ったら、
「(現像は)できますがリスクが大きいですよ」
んん? 8mmの現像ってそんなに大変なのか? スーパーエイト利用者だった身からすると何か妙。民生用撮影機が出回っているのに現像のシステムが確立されていない?
ザブルーダーが使っていたのはベルハウエルの414PD式8mm撮影機ズーマティック(後にザブルーダー・カメラと呼ばれる)。

実はコダックがカートリッジ型8mmフィルム「スーパーエイト」を発表するのは2年後の1965年。
この時使われていたフィルムはダブル8です。
両サイドにパーフォレーション(送り穴)がある16mmフィルムを半分ずつ往復撮影して、現像後縦に裁断するというアクロバティックなシステム。往復する際に二重露光になる可能性もあり、現像に責任は持てないよ、とコダックの人は言っていた訳です。
そう言えば、チノンの8mmカメラ、どこにしまってあったかな…。