
「男だ。自分が決めたんならそれでいいだろ。でもまあ…帰ってこいよ」
「…はい!」
お話は直球。枝葉の無いシンプルな幹。
描写は細緻。色ひとつ影ひとつ言葉ひとつ疎かにしない丁寧な仕事。
昨日ご紹介した「たまこまーけっと」の後日談ですが、人語を解す鳥デラや飼い主(上司?)チョイは登場しません(一瞬映りはしますが、ほとんどサブリミナル扱い)。
これはタイトル通り、たまこともち蔵の虚飾を排した王道ラブストーリー。
本格的な映像の勉強をするために東京の大学を受験することにしたもち蔵。
うさぎ山商店街を離れる事はたまこと離れる事。せめてその前に自分の想いだけは伝えたい。

受験、進路、将来設計。色々な事が本人の意思を追い越して動き出す高校3年次。
『留学するか悩むより、行ってみちゃおうかなって。ちょっと不安だけど。でも、最初は誰でも何もかも初めてだよね』
各々の道を歩き出していく周りに戸惑うたまこ。心地良い日常の瓦解。

『上手に受け止められなくて…バトンと、それから…』
伝える。応える。お話は本当にシンプル。なのに1シーンに1カットに1コマに一言に作り手の想いが凝縮されているので、噛めば噛むほど…。
説明的台詞に頼らず最低限の言葉と画で魅せる。当たり前の矜持。

餅を喉につまらせるという冗談のような事故で救急搬送されるたまこの祖父。父は配達で留守。テンパッたたまこの視界に入るまめ蔵。思わずこぼれる「まめ蔵!」という悲痛なつぶやき。
救急隊員「ご一緒されるご家族の方は?」
あんこ「私とお姉ちゃんです」
まめ蔵「俺もです!」
「俺も一緒に行きます」ではなく「俺も(家族)です!」
そのまめ蔵をひとりの男として認め接する豆大。