『岡部…岡部。忘れることなんて出来る訳ない。だって、あなたをずっとずっと前から知っている。ずっと、ずっと前から想ってる。これからも…ずっと…ずっと…』
尺が足りないの蛇足だのと批判の声もありますが、紅莉栖のこの台詞だけで私は満足です。
「劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ」
(2012年/佐藤卓哉監督)
幾多の過去改変の末、岡部倫太郎が辿りついた世界線STEINS;GATE。
まゆりも紅莉栖も死なない、岡部が望む結末を具現化したたったひとつの世界。
しかし、その代償はデカく、この世界のすぐ隣に存在するR世界線に飛ばされてしまいます(他の世界線での記憶、それも何度となく仲間を失うというトラウマ級の、を持ち続けているために、STEINS;GATEを現実社会として認識できなくなってしまう、という理屈らしい)。
紅莉栖の目の前で忽然と消失する岡部。岡部という人間は最初からいなかったものとして世界改変させる現実。
誰もが岡部の存在を忘れた、いや最初から知らないはずの世界で岡部のイメージを求める紅莉栖。それはデジャヴ(異なる世界線での記憶の残滓)なのか。
岡部を救うために岡部が辿った孤独と悔恨を追体験する紅莉栖。
「あなたは…こんな苦しみをたった独りで…」
TV版本編のようなヒントを数珠つなぎにして視角が広がっていくわくわく感はありません。科学ドラマとして理に落ちる作りでもないです。
でもねえ、本作に関しては、んな事ぁどーでもいいんです。
ヒロイン紅莉栖の葛藤と決断。救済。剥き出しのロマンス。
ベタなオチもWelcomeです。
特典ドラマCD『現存在のアポステリオリ』は必聴。
岡部がいないままの世界線で未来を迎えた紅莉栖。タイムマシンを完成させながらその使用に踏み出せない苦悩。その心情を察して過去に赴くことを決意する鈴羽。
劇場版本編では描かれなかったバックグラウンドストーリー。これ聴くと聴かないとでは本編の見え方が大きく異なります。
私は本編→ドラマCD→本編2順目と繋ぎましたが、2順目は台詞ひとつひとつに反応してしまい涙止まらず(歳のせいで感情決壊のハードルが恐ろしく低くなっている)。
いずれにしてもTV版視聴済みが大前提の一見さんお断り映画なので、TV版未見の方はまずはTV版の視聴をお勧めします。
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