デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

霧をただひとつの味方として。 太平洋奇跡の作戦 キスカ

イメージ 1

 

『米の一俵でもいい、弾の一発でもいい、キスカに届けるんだ!』

 

『帰ればまた来ることができる…』

 

無理を承知で突っ込む者。必ず救出することを誓って退く者。

 

イメージ 2

 

一発の銃弾も使わず、一滴の血も流さず5,200名の兵士を米軍包囲の孤島から引き揚げた文字通り奇跡の作戦。

 

「太平洋奇跡の作戦 キスカ

1965年/丸山誠治監督)

 

ガダルカナル(戦死24,000)、サイパンテニアン島(戦死39,000)、硫黄島(戦死20,100)。次々に玉砕していく南方の島々。北方でもアリューシャン列島のアッツ守備隊が玉砕。同列島内のキスカも玉砕オープン・リーチ。

 

『このままでは、敵の上陸を待つまでも無く、ひと月を経ずして守備隊は全員餓死します。こんなことがあっていいのか? いやいかん。絶対にいかん。もしここでアッツに続きキスカまで見殺しにしたら、我々は恥を後世に晒します。総長、キスカを救わせてください!』

 

北方担当の第五艦隊司令長官・川島中将(山村聡の発言に動かされ、軍令部総長志村喬キスカ島守備隊5,200名の救出を決意。

 

作戦実行部隊である第一水雷戦隊司令官に指名されたのは、海軍兵学校をドンケツで出た現場叩き上げの司令官、大村少将(三船敏郎

 

アリューシャン名物の“濃霧”を利用する作戦は成功するのか(勿論します)。

 

2年後の『日本のいちばん長い日』では海軍、陸軍の代表として一歩も譲らぬ意地を見せる山村と三船が厚い友情と信頼に貫かれた兵学校同期という設定がいい(憎まれ役は西村晃)。

 

三船の駆逐艦をあと五杯』という要望に『無茶言うな!どう頑張ってもあと三杯』と言いながら司令部では『六杯と言ったら六杯!』と水増し請求する山村の阿吽。

 

濃霧の中を一列縦隊で侵攻し、浅瀬が続く岩礁海域を軋みをあげながら進む艦隊の迫力(円谷英二入魂)。

 

イメージ 3

 

救出に割ける時間は僅か1時間。常識はずれの短時間で5,200人を収容するには綿密な準備が必要。しかし、無線は完全封鎖。天候任せの作戦を、救出する側・される側双方が正しく読み、予測し、動かねばなりません。

 

いつ来るのか。願望。焦燥。失望。それでも信じる、待つ、諦めない。

 

イメージ 4

 

スケールの大きいプライベート・ライアン。玉砕戦の悲惨さばかりが強調される大戦末期の作品群の中にあって一服の清涼剤のような作品です。戦争映画としてはかなり異色。

 

実際に救出された兵士(今後は望む術もない歴史の生き証人)がアドバイザーとして参加しています。

 

史実の映像化(細かい所は色々違うようですが)なので、ヒロイン的立場の人がいない(そもそも女優が出ていない)無骨さが“戦争映画”の誉れを上塗りしています。


イメージ 5←ランキング投票です。よろしければワンポチを。