『俺たちは型にはまった生き方をして、酷い目に遭っている。女の望む男も目指した。頼り甲斐があって、大人で、家庭的な男だ。だが女達は、そんな男に退屈を感じるんだ。もう振り回されたりはしない。“お座り”も“伏せ”も “死んだふり”も御免だ!』
てっきり馬鹿映画だと思っていたら(いや実際、馬鹿映画なのですが)、妙に清々しい感動を覚えてしまいました。
アルバトロスの天候は今日も晴れ。
「ゾンビハーレム」(2009年/ジェイク・ウェスト監督)
ボンクラのメッカ、イギリス(←認識に偏りがあります)。
かつては牛追い祭りのヒーローだったヴィンスも今やただのしょぼくれ親父。妻に逃げられ離婚秒読みで落ち込んでいるヴィンスを励まそうと仲間が結集。
何でもムードリーという町には女が男の4倍いるらしい。おっとそいつはハーレムじゃねえか。皆でそこへ行って飲んで騒いでまぐわおう!
しかし、ムードリーで待っていたのは、軍の実験で感染した女ゾンビの群れでした。
いやあ、思わず目を細めて口元をゆるめてしまう馬鹿設定です。
女しか感染しない特殊ウィルスというのも斬新ですが、他にも凝った隠し味が多々。
この町も男は皆ボンクラらしく、働いているのは女ばかりのよう。という訳で、ゾンビの色づけが職業別にされています。
両手にハサミを持ったシザーハンズな美容師ゾンビ、解体はお手の物、な肉屋ゾンビ、ドリル片手のデンタルゾンビなどなど。
年齢的にも、JKゾンビから鉞担いだ花嫁ゾンビ、指フェチな有閑マダムゾンビ、歩行器がないと歩けないババアゾンビと幅広くラインナップ。必ず好みのタイプのゾンビに出逢えるでしょう(笑)。
で、お話のキモになるのは主人公含むボンクラ6人組が全員、女で失敗もしくは苦労している事。
冒頭の人物紹介で全員が妻、彼女(一人はゲイなので彼氏)、行きずりの女から『糞野郎!』と罵倒されています。
出かけた後も干渉の手を緩めない女達。彼女らの拘束を逃れてやってきたのに、出迎えてくれたのは女ゾンビ軍団。
女に追われ、友を失い、自らも血まみれになりながら、これまでの生き方を反省して『これからはありのままの自分で行く』と決心するシーンは(フェミニストの方は怒るかもしれませんが)実に感動的。
『道は障害だらけだぞ』
『障害が何だ。交通ルールを守って生きてきたが、結局着いたのはムードリーじゃないか。ベルトを締めろ。荒地を走るぞ』
器はゾンビですが、盛り付けは女に骨抜きにされた男たちのプライド奪還物語。
拾い物だと思います。